The Kink Controversy: February 2011アーカイブ

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周知のとおり、来たる2月27日にAll Tomorrow's Parties(以下ATP)の姉妹イヴェントとでもいうべきI'll Be Your Mirror(以下IBYM)が新木場スタジオコーストにて開催される。

ATPといえば、開催ごとにアーティスト/バンドがキュレーターとなり、出演者を決定するというコンセプトで知られている。過去にもモグワイ、オウテカ、トータス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、果てはシンプソンズの作者として知られるマット・グレイニングetc...、錚々たる面々がそのホスト役を務め、どの面々も自分たちの趣味性を存分に発揮した味のあるブッキングを披露。商業主義に中指を突き付けるかのような(実際、ATPは一切の企業スポンサーを受け付けていないことでも知られる)挑戦的かつイマジナティブなラインナップに毎回圧倒させられる。このフェスの創立者であるバリー・ホーガンや(ソニック・ユースの)サーストン・ムーアは過去にATPを「究極のミックステープ」と形容しているが、まさにアーティストも含めた音楽ファンの夢を具現化した理想的なパーティーと呼べるであろう。

世に数多ある音楽フェスのなかでも、「DIY」とか「オルタナティヴ」とかという観点でいえばぶっちぎりなこのイヴェントが、ついに日本でも開催されるというのは実に興奮させられる(残念ながら、最初ということで上記のキュレーター・システムは今回採用されていないが、たとえば選ばれた出演者は世間でのATPのイメージとかなり近いものがあるし、そのなかでもトリを務めるゴッドスピード・ユー!ブラックエンペラーの演奏枠が2時間もあるのは実に"らしい"といえるだろう)。

一方で、どうせ観るなら本場の空気を直に体感したい...そう考える人もいるはずだ。IBYMは基本的な部分はATPとは変わらないものの、都会の町中で開催することで手軽に楽しめるようにすることをコンセプトとしており、それなりの準備をしてド田舎のリゾート施設で宿泊もしながらノビノビと満喫する本家ATPとは若干様相が異なる。またATPに限らず、コーチェラやロラパルーザ、グラストンベリーなど、海外の有名フェスのラインナップをながめるたびに、悔しくてハンカチを噛む思いをした音楽ファンはたくさんいるはず。

しかし、やっぱり海外に足を運ぶとなるといろいろ心配になってしまうのも事実。言葉も通じない、勝手もわからない。費用は? 交通手段は? 未経験者からしてみたら、どうしても敷居が高くて遠い世界に感じてしまうのも無理のない話だ。

そこで今回は<ATP NY 2010レポート対談>と題して、昨年9月3日~5日に開催された同イベント(このときのキュレーターは1日目と2日目をATP、3日目はつい最近ユニクロTシャツ化もされた、偉大な映画監督ジム・ジャームッシュ!)について、黒田隆憲さんと上野功平さんの両コントリビューターがその目で見聞きしてきた感想や体験談を、パスポートすら未所持なわたくし小熊が聞き手となり、対談形式で掲載することにした。IBYMへ臨む前にこれを読めばテンションも上がること必至だし、日本での常識では考えられない魅力的な目ウロコ話の連続で、海外渡航のノウハウにいたるまでを実体験込みで語っていただいているので、これから海外に"冒険"してみるつもりの方にもぜひとも参考にしてほしい内容になっている。

ちなみに、この対談自体はイヴェントの終わった数日後(昨年の9月中旬ぐらい)に収録されていたものである。そのときはまさか日本でも開催されることになるとは誰も予想だにしておらず、アナウンスを知ったとき三人一様に驚いてしまったことを本文に入る前に追記しておく。今回のIBYMはチケットも無事にソールドアウトしたそうだし、日本でもこのまま定着していってほしい! 

また今後のATPは、イギリスにて5月にアニマル・コレクティヴ、12月にジェフ・マンガム(ニュートラル・ミルク・ホテル)、またIBYMのほうはロンドンで7月、ニュージャーシーで9~10月にともにポーティスヘッドとATPが、いずれもキュレーターとなり開催される予定となっている。

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3日連続でお送りするこのコーナー。今回の筆者はアーケイド・ファイア論に引き続き八木皓平さんで、タイトルは「ノ―・エイジの傲慢さ」。ご存じのとおり、ノー・エイジはつい数日前に来日公演を終えたばかり。なんてすばらしいタイミング(この原稿もずいぶん前に送られていたものなのでした)!

ノー・エイジというのは語りがいがある...というか、知らない人に良さを説明するのが難しいバンドという印象が個人的にある。何か決定的なリフやメロディが存在するわけでもない。だが、まちがいなくクール。07年渋谷o-nestでの初来日公演(そんなにお客さんは入ってなかった)を僕は観ているが、「ハードコアあがりの人が機材と瞬発力を駆使して面白いことをやっている」という印象で、面白いには面白いが、これならライトニング・ボルトやヘラあたりのほうが凄くね? と思った記憶がある。彼らはピッチフォークの絶賛で火がつき、次いで日本でも若い音楽ファンを中心に人気バンドのひとつとなり、チケット代も一気に高騰した。08年の『Nouns』はアートワークも含めて格別なアルバムだったと思う。昨今の音楽業界のいろいろな物事を象徴しているバンドだ。

もちろん魅力的なバンドには違いないが、八木さんはいろいろ思うところがあったようだ。こちらも文章の感想に限らず、ライブの感想でもバンド/作品論でも何でもドシドシご意見お送りいただけると幸いです。ツイッター上でもハッシュタグとか使って議論が巻き起こったりしたら嬉しいし、健全でいいなぁと個人的には思います。

では、どうぞ!

(小熊俊哉)

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アーケイド・ファイアにつづいて、今度はディアハンターに関する投稿をご紹介します。なんとも豪華な感じですな(笑)...とか言ってる場合じゃないか。実はこれも、昨年10月にいただいていたお便り/原稿です。非常に興味深いものではあるのですが、編集部ふたり(小熊&伊藤)ともドタバタゆえ、アップできずにいました。すみません...!

昨年5月にこのサイトの「ヴァージョン4」を公開して以来、こんな感じを「読者諸氏とのフィードバック」感覚の基準にしたいと思いつつ、昨年初夏「フライング」的にこのコーナー、The Kink Controversyを始めていたわけです(ただし、ここには、読者さんからの「とくに興味深い」お便りだけではなく、コントリビューターさんや我々編集者の原稿を掲載させていただくことも、あると思いますが)。

でもって、今回お便り/原稿ご紹介させていただく財津奈保子さんは、ここにも、ここにもご投稿いただいています。いや「八百長」...「出来レース」とかじゃないですよ。

おそらく彼女には、クッキーシーンみたいなしょぼい(笑)...少なくとも「メジャー」ではないメディアをとおしてでも「なにかをひとに伝えたい」という衝動が強くあるのでしょう。うれしい/ありがたいことです...。

では、どうぞ!

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ようやくPrivate Top 10s of 2010も第一弾を掲載完了し、編集部側としてもやれやれひと段落(「遅ぇよ!」って声も聞こえてきそうですが、そこはまぁ...)。

いろんな人たちの年間ベストがずらりと並んでいるのを見ると、本当にいろんな観方(聴き方)があって、数多くの作品がリリースされているのだなと思う。もちろん、知らない作品も正直多い。リスナーが横並びになって同じものを聴く時代はとっくの昔に終わったのだなと改めて実感させられた(まあ、20代中盤の僕にとってはそんなのとっくの昔から当たり前の感性ではあるのだが...)。

そんな時代に、各メディアやリスナーから圧倒的な支持を集めたのがアーケイド・ファイアの三枚目のアルバム『The Suburbs』である。あらゆる年間ベストのたぐいに顔を出し、CD不況のこのご時勢にインディとしては破格のセールスを記録。つい先日にはグラミーのなかでも最高賞にあたる最優秀アルバム賞まで受賞してしまった。2007年にモデスト・マウスが『We Were Dead Before The Ship Even Sank』でビルボード・チャートの1位に輝いたときも相当話題になったが、カナダのこの大所帯バンドが成し遂げたことはそれをさらに上回る歴史的快挙だ。

彼らのグラミー受賞が決まったとき、所属先であるマージ・レコーズ社長兼スーパーチャンクのリーダーであるマック・マッコーハンが日本でジブリの森を満喫していたエピソードにも顕著だが、(欧米の)インディー・ロックが基本スタンスを妥協することなく、名実ともに市民権を獲得したことについては今後大いに議論の余地があることだろう(残念ながら、日本国内では彼らの快挙はまるで話題になっていないし)。正直にいえば僕は彼らの熱心なファンではないけれど、テリー・ギリアムが監督を務めて世界中に中継された8月のライブには身振るいしたし、ここまで露骨に強い物語性と意志を有する音楽がポップ・ミュージックの世界で広く賞賛されるのは喜ばしいことだと思う。

今回お届けするのは、そのアルバムをテーマに書かれた八木皓平さんの原稿だ。現役の学生である彼は過去にもこのコーナーに登場し、ツイッター上でも日々熱い議論を交わしている。つい最近、クッキーシーンのコントリビューターをお願いすることになり、アーケイド・ファイアと同じカナダのこれまた素晴らしい才人、デストロイヤーの作品についてのレヴューで先ごろ無事デビューを果たしていただいた。

実は原稿自体は9月(だから、コントリビューターをお願いするずっと前)にいただいていたのだが、ドタバタしたまま宙ぶらりんとなってしまい、この時期の掲載となってしまった。本人にはごめんなさいとしか言いようがないが、アーケイド・ファイアのこのアルバムはレコード屋さんに並んだ時点ですでにクラシックとしての風格を讃えており、今後なんども繰り返し語られ、事あるごとに参照点となるべき作品である。ウェブ媒体にもっとも求められるのは情報の量とスピードなのかもしれないが、すぐれたポップ・ミュージックは発売日を過ぎても簡単には風化するものではなく、むしろ時間を置くことでより強い魅力を発するようになるものだ(そして奇しくも、この原稿も"時間"を切り口に書かれている!)。

アーケイド・ファイアについて(昨今のインディー・ロック全般でもいいけど)語る人々は総じて文学/哲学的でシリアスな論調に陥りがちであることの理由をむしろ僕は分析したくなったりもするが、文章の感想から作品論、こういった考えに対する意見まで、いろいろな反響があると嬉しいです(こちらからどうぞ)。そういった声も今後はもう少し早くサイトにアップできると思います。

というわけで、どうぞ。

(小熊俊哉)