Fuji Rock 2019

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FRF19-1-3.jpg  今年も新潟県南魚沼郡湯沢町、苗場スキー場で開催される、フジロック2019。7月26日(金)~28日(日)各日のヘッドライナーは、ケミカル・ブラザーズ、シーア、そしてザ・キュアーの3組だ。23年め(マジック・ナンバー)を迎える新たな歴史の幕開けを告げるかのようなカラフルなラインアップに、わくわくが止まらないかたも多いのではないだろうか。

 初日は、9作目『No Geography』をリリースしたばかりの絶好のタイミングで、8年ぶりのフジロック登場となるケミカル・ブラザーズ。ぶち上げてくれるはず。この日のホワイト・ステージのトリを飾るのは、トム・ヨークのソロ・プロジェクト、トゥモローズ・モダン・ボクシーズ。彼のもうひとつのプロジェクト、アトムズ・フォー・ピースがフィジカルなグルーヴを追求しているのとは対照的に、スタジオ音源ではミニマルでクールなサウンドが印象に残る。フジロック出演に合わせるかのように、3作目『Anima』のストリーミング配信もスタートしたばかり。最新のフォーマットでどんなライヴ・パフォーマンスを披露してくれるか、期待しよう。4月に早くも14作目となる『Fishing For Fishies』を発表したオーストラリアの7人組サイケ軍団、キング・ギザード& ザ・リザード・ウィザードと、昨年の『Be The Cowboy』が大好評のミツキにも注目。彼女は9月以降のライヴ活動の休止を発表しているので、貴重なステージになるのはまちがいない。

 つづいて2日目は、ビヨンセやリアーナに楽曲を提供するソングライターとしても大きな存在感を放つシーアがヘッドライナー。初来日ライヴとしては、申し分のない舞台が用意された。ちなみに、フジロックで女性アーティストがヘッドライナーをつとめるのはビョークに続いて2人目。また、この日のホワイト・ステージの充実ぶりはどうだ! アンノウン・モータル・オーケストラ、コートニー・バーネット、アメリカン・フットボール、デス・キャブ・フォー・キューティーが勢揃い。2014年のまさかの復活以降、着実に活動を続けているアメリカン・フットボールは3月に3作目のアルバムをリリースしたばかり。「伝説」では終わらない、唯一無二のリアルなエモーションを今こそ堪能しよう。しかも、そのあとに続くのがデス・キャブ! 中心人物ベン・ギバードとともにバンドを支え続けてきた盟友クリス・ウォラの脱退、ベンと女優ズーイー・デシャネルとの離婚...。05年のメジャー移籍後も活動のスケールと音楽性を順調に広げてきた彼らにおとずれたふたつの別離は、『Kintsugi(金継ぎ)』という不思議な名前を持つ前作に刻み込まれた。「金継ぎ」とは、壊れてしまった器の破片を継ぎ合わせて直す日本の伝統技法のこと。そこから3年の月日を経てリリースされた最新作は『Thank You For Today』と名づけられた。大きな悲しみを乗り越えて、新たに5人組となったデス・キャブ。壊れたなにかを取り戻そうとしていた日々から、「ありがとう」と言える今日へ。変わってゆくことと、変わらないなにか。そのふたつが奇跡的なバランスで成りたつ、魔法のような瞬間をしっかりと見届けよう。

II (Ichiro Inukai)


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 2007年、13年以来、なんと3度めのフジロック総合ヘッドライナーに選ばれたのは、ザ・キュアー。ぼくにとって最も重要なバンドのひとつだが、両年とも行けなかった。1984年初来日時の中野サンプラザ・ホールにおいて、また1993年におけるロンドン・フィンズベリー・パークで開催されたX-FM(現 Radio X)主催のワン・デイ・フェスティヴァル(ベリー、シュガー、ザ・フランク・アンド・ウォルターズらが出演)のヘッドライナーとして彼らのライヴを経験済だったらから、ではない! あくまで個人的都合により、涙をのんだ。昨年ロンドンのハイド・パークでライドやスロウダイヴを従えておこなったザ・キュアー主催40周年ヘッドライナー・フェスティヴァルも同様だった。バンドというのは生きものゆえ、つねにその時点での最新ライヴを体験したい。

 ぼく自身が観た過去の84年と93年、そして07年と13年のフジロック、さらに世界有数のフェスである今年6月28日のグラストンベリー(UK)、7月6日のロスキレ(Roskilde:デンマーク)におけるザ・キュアーのライヴ・セットリストに従って、6個のスタジオ・ヴァージョン・プレイリストを作成、ちょっと浸ってみた(よくやるよ、と言う? いや、ぼくはそれほど彼らの音楽が好きだってこと! それはそれとして、84年と93年のものまでインターネットで見つけられるとは。軽くめまいがした:笑)。すべてのプレイリストが、それぞれ異なる「アルバム」のようだった。緩急自在の選曲が毎回かなり違うのはもちろんのこと、今現在の気分に最も合っていたのが今年7月6日のセットリストだったというのは偶然にしても、あらためてこう断言できることに気づいた。ポップさの裏に一種の諦念が潜んでいたり、荘厳な鎮魂歌のように聞こえる曲の奥に一筋の光が見える彼らの音楽の多様性には、あたかも万華鏡のような魅力があって、まさに「生きて」いる。

 フジロック2019全体に話を戻せば、基本的に洋楽派であるぼくとしては珍しく、スガシカオ、七尾旅人(26日)、アジアン・カンフー・ジェネレーション、銀杏ボーイズ、クラムボン(27日)、スカート、竹原ピストル(28日)といった邦楽系セレクションに膝を打った。最後に、上掲メイン・タイムテーブルには載っていない注目アクトを、みっつ挙げておこう。26日の深夜、ガンバン・スクエアに登場する、ジ・アレックス(The Alex)。個人的に今最も期待しているバンドのひとつだ。28日夕方、カフェ・ドゥ・パリにおける、コンドウ・イマ・トゥエンティワン(近藤等則によるバンド)。さらに同日アトミック・カフェ・トークで、ギター演奏まで披露するかもしれない、玉城デニー沖縄県知事。そう、ぼくは思う、音楽と政治はあたりまえのように切っても切れない関係にある。そんな考えかたを嫌がるひともいることは、まあ、わかってるけどさ(笑)。

HI (Hidetsugu Ito)