伊藤英嗣: September 2015アーカイブ

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クッキーシーンが2008年から契約しているレンタル・サーバー会社の判断により、きたる9月17日(木)午前1時から7時のあいだにサーバー移転作業がおこなわれます。

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2015年9月15日16時12分 (HI)

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 ザ・ストロークスのサウンドにおいて重要な位置を占めるギタリストの、なんと7年ぶりとなるサード・ソロ・アルバム。昨年リリースされたリード・シンガー、ジュリアン・カサブランカスのセカンド・ソロと、見事に好対照をなしている。表裏一体というか、やっぱどちらも同じバンドの一部なんだと思わせてくれる。もちろん、いい意味で。


 まずはオープニング・ナンバーのタイトルに驚いた。なにせ「Born Slippy」。ある程度以上の年齢で特定の趣味を持った音楽ファンであれば、アンダーワールドというユニットのヒット曲を思いださざるをえない。映画『トレインスポッティング』にも使われた、おそらく彼らのレパートリーで最も有名な曲のひとつだ。


 カヴァーかも? あれをどんなふうに処理してるのか?と思ったが、違った(笑)。オリジナル曲だった。ただし、その「釣り」の持つ意味みたいなものがアルバムを聴きすすめるにしたがって、なんとなく伝わってきた。つまり、全体的に彼らのルーツでもある音楽との共通項を感じさせるのだ。エレクトロニックなダンス・ミュージック・ユニットというイメージの強いアンダーワールドだが、80年代には「ちょっと電気入った」感じのロック・バンドだった。ひらたくいって、このアルバム、ジュリアンの過去2枚のソロ・アルバムそしてザ・ストロークスの(今のところ)最新アルバムなみに、いわゆるニュー・ウェイヴっぽい。


 昨年のジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイズ『Tyranny』がオルタナティヴもしくはポスト・パンクもしくはノー・ウェイヴ色が濃かったのに比べ、アルバート・ハモンド・ジュニア『Momentary Masters』は(そういった香りを漂わせつつ)もっとポップ。だから、もしなんらかの音楽用語でこれを表現するのなら、やはりニュー・ウェイヴというのが最も近いのかも。


 そんなふうに感じつつ、実に気持ちよく聴いていたところ、全10曲中6曲、アナログ盤であればちょうどB面トップで、ぶったまげた。80年代初頭のチェリー・レッド・レコーズにも通じるアコースティック/エレクトロニック・サウンドにのせて歌われるのは...思わず曲名を再確認してしまった。たしかにそうだ。初期ボブ・ディランの「くよくよするなよ(Don't Think Twice, It's Alright)」ではないか...。たぶん、こういった驚きを聴き手にもたらしたいのだろう。ディスク・ケース裏にはわざわざ短く「Don't Think Twice」と表記されている(ネタバレ、すみません...)。


 60年代前半のディランといえば、プロテスト・フォークの旗手という印象がいまだに強いかもしれない。それは、もちろん「間違い」ではない。ただし、ひとつはっきり言っておけば、彼は「普段の生活のなかで感受性鋭くキャッチしたセンスを、適確すぎてびびるほどの言葉で歌っていた」。それだけのこと。この曲は、まさにその(いわゆるプロテスト・フォークではないという意味の)好例。極めてリアルな失恋歌だ。この歌の主人公は、ある意味未練たらたらな状態で、それでも恋人に別れを告げねばならない自分に向けて<くよくよするなよ/これでいい>と歌っている。


 それはそれで、なんとも身を切られるような世界。ただし、ある種のクールさが漂っている。昔からいろんなひとたちに歌われてきた曲だが、ちょっと意外なところでは高橋幸宏もカヴァーしてた。うん、そうだね、だからそう言うわけではないけれど、このアルバム全体に漂う「ちょっと変わった、かなり独自のニュー・ウェイヴ感」は、なんとなく「80年代の幸宏」っぽい? いや、そうでもない? それよりさらにキャッチーなガレージ/パーソナル・コンピューター感がある。だから、やはりもっと「今」の音楽。


 そして、ここで彼がディランをカヴァーしたことに関してもうひとつ感慨深いのが、やはり父親アルバート・ハモンドという存在に対するバランス感覚みたいなもの。ジブラルタル出身の両親のもと、ロンドンで生まれた父は若いころから音楽活動をつづけていたが、70年代にアメリカに移住してから、シンガーそしてソングライターとして破格の成功を収めた。自ら歌った「カリフォルニアの青い空」にしても、カーペンターズに提供した「青春の輝き」にしても、どちらかといえばプロのポップ職人というイメージ。実際それらは、日本の歌謡曲~Jポップの世界でも重宝される形で当時からわが国でも広く受けいれられてきた(だから、ここでもイレギュラー的に邦題で表記してみた。この原稿のために今回あらためて調べてわかったのだが、70年代後半に日本でもヒットしたレオ・セイヤーの曲も書いてたんだ...。80年代には結構ビッグ・イン・ジャパンっぽい「おとなのポップ・ソングライター」的な側面もあった。なるほど、だから自分もとりわけ記憶に残っているのかな)。


 上記のような父親を持つ彼。これも今回初めて知ったのだが、なんと彼の父は2000年に大英帝国勲章までもらっているらしい。音楽業界に対する貢献により、ってことだろう。とすれば、彼としては微妙な気分だったかもしれない。なぜなら、ザ・ストロークスがラフ・トレードからのシングル「The Modern Age」でようやくレコード・デビューを飾ったのは2001年1月のことだったから。


 そんな親の影から(べつに、そのひとに対する個人的愛情を否定するわけではなく)脱すること。セカンド・アルバムという超初期、まるで青さのかたまりのような時期のディランの、それも(00年代に出た)最新ベスト・アルバムには入っていない(だけど、ディラン・ファンなら、ほとんどのひとが愛している)曲をやる。これ以上見事な「オルタナティヴ行為」があるだろうか? そして、あらためて冒頭のオリジナル曲のタイトルに感動する(「おれは生まれながらのできそこない」みたいな。そんな感覚は「くよくよするなよ」にも、もちろん入ってるわけで...)。


 とまあ、その2曲に関する話が多くなってしまい申し訳ないのだが、アルバム全体の内容も、素晴らしいですよ。ファースト・ソロ、セカンド・ソロ以上に見事な「現在の世界のスケッチ」になっていると思います。



(伊藤英嗣)

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ELYSIA CRAMPTON『American Drift』.jpg

 去年7月、フォルティーDLことドリュー・ラストマンインタヴューをする機会があった。そのときは実にさまざまな話をしたが、なかでもE+Eというアーティストの話で盛りあがったときのことは、今でも鮮明に覚えている。さらに、ドリューが主宰するレーベル、Blueberry(ブルーベリー)でE+Eと契約したいという裏話も聞き、ここまで音楽の嗜好が合うアーティストにはそう簡単に巡りあえないなと思ったものだ。このインタヴューから約1年後、E+Eがエリシア・クランプトン名義で素晴らしいレコードを発表してくれた。しかも、Blueberryから! ドリューはエリシアと無事契約できたというわけだ。本当に本当に、おめでとう。


 さて、そのレコードとは、『American Drift』と名づけられたアルバム。エリシアの音楽はサンプリングが基調にあり、ドリーミーで解放的なシンセ・サウンドを特徴としているが、それは本作にも引きつがれている。ひとつのサンプル・ネタを執拗に繰りかえし、その周りをさまざまな音が矢継ぎ早に飛び交うという手法も健在。それゆえ、これまでエリシアの音楽を熱心に追いかけてきた者からすれば、〝進化〟というより〝深化〟に聞こえるかもしれない。クドゥーロ、トラップ、アンビエントなど数多くの要素を細切れにして撹拌させた作風も、エリシアの十八番。それでも、本作をキッカケにエリシアの音に触れた者からすれば、〝衝撃〟になるはずだ。


 圧巻は、約10分に及ぶ「Wing」である。執拗に繰りかえされるアコースティック・ギターのサンプルを軸に、つぎつぎとSEが飛びだしてくる。そのSEを挟むタイミングがこれまた絶妙で、聴き手を陶酔に導くアグレッシヴなグルーヴを生みだす。それは言うなれば、恍惚と妖艶に満ちた愛しき激情。


 そして、『American Drift』というタイトルについても特筆しておきたい。このタイトル、日本語では〝アメリカの流れ〟と訳せるが、そうしたタイトルを掲げた作品で、銃の装填音や軍隊の掛け声にも聞こえるヴォイス・サンプリングを多用しているのは、どうにも意味深長だ。もちろん、筆者の考えすぎである可能性も否定できないが、本作は〝トランスジェンダーとして生きるエリシアから見たアメリカ〟という捉え方も可能だと思う。だからこそ本作は、キラキラとした高揚感を持ちながらも、同時にダークで殺伐とした空気が漂っているのではないか。と、筆者は解釈したが、あなたの心にはどう映っただろう?



(近藤真弥)

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2015年8月17日〜8月30日 更新分レヴューです。

SLEAFORD MODS『Key Markets』
2015年8月20日 更新
VARIOUS ARTISTS『Cassette Club 3』
2015年8月25日 更新