伊藤英嗣: July 2014アーカイブ

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 ザミルスカのファースト・アルバム『Untune』だが、まずは本作に出逢うまでの話をさせてもらうとしよう。


 筆者は最近ポーランドのテクノにハマっている。キッカケは、チノのシングル「Early Days」。ちなみにこのシングルを手に取ったのは、《L.I.E.S.》などからリリースを重ねるヴェテラン・アーティスト、レゴウェルトによる表題曲のリミックスが目当てだったから。ハードウェアで作られた良質なテクノ/ハウスを量産する男の仕事ゆえに筆者も楽しみにしていたのだが、出来は "まあまあ" というのが正直なところで、強く惹かれるものではなかった。ところが、チノのオリジナル・トラックには興味をかきたてられてしまった。特に「Raw And Rugged」は、絶妙なタイミングで挟まれるヴォイス・サンプリング、ダンスフロアに集う人々のツボを確実に押すであろう巧みなトラック・メイキングといった具合に、ダンス・ミュージックの機能性を見事に備えていた。


 その後、ポーランドのテクノをディグる過程で遭遇したのが、RSSボーイズという2人組ユニット。アーティフィシャルかつエキゾチックな雰囲気を纏うヴィジュアルは高い匿名性に包まれ、作品のアートワークではペニスを用いるなど、一種のグロさも感じさせる。このセンスは、カニエ・ウェスト『Yeezus』に参加し、自身のサウンドクラウドにアップした『&&&&&』も話題を集めたアルカのヴィジュアル・イメージに通じるものだ。


 そんなRSSボーイズの作品をリリースしている《Mik.Musik.!.》から発表されたのが、ザミルスカの『Untune』というわけだ。ポーランド出身のザミルスカはシロンスク大学に通う現役の学生で、MVのほとんどを自ら制作するなど、DIY精神と創造性を持つ才女。


 彼女が鳴らすサウンドはズバリ、レジスが主宰する《Downwards》周辺に多い、ポスト・パンク色が濃い硬質なテクノ。インダストリアルでダークな雰囲気を強く打ち出しているが、そこにベース・ミュージックの要素を混ぜているのも面白い。こうした混合の類例を挙げるとすれば、ベース・ミュージックとインダストリアルを接続した音楽性で注目を集め、ハビッツ・オブ・ヘイトのメンバーとしても活躍するハッパになるだろうか。


 また、「Army」や「Duel 35」などはダンス・ミュージックの快楽性を秀逸なビート・メイキングで生みだしているものの、全体的にBPMはそれほど速くない。音の抜き差しも最低限に抑えられ、基本的には体よりも心を飛ばす音作りが目立つ。それゆえ、聴けば一発でハマるというような即効性は期待できないが、代わりにジワジワと魅了されていくスルメのような味わい深さをもたらしてくれる。このあたりは好き嫌いがハッキリ分かれるかもしれない。とはいえ、その味わい深さが聴き手の能動性を喚起するのも事実で、それが本作の魅力となっている。


 そして、ザミルスカの音楽を聴くうえで見逃せないのは、彼女がレベル・ミュージックとしてのテクノを鳴らしているということ。自身のフェイスブックにも書いているように、彼女は「ステレオタイプを破壊すること」に興味があるらしく、このことからも強い反骨精神を持つアーティストなのがわかる。だからこそ、先日もマレーシア航空機が領土内で撃墜されるなど、緊迫状態が続くウクライナを支援する目的で「Dissent [Support For Ukraine]」を発表したのだろう。このような精神は、アンダーグラウンド・レジスタンスの首謀者として知られるマッド・マイクに通じるもの。いわばザミルスカは、新たなライオット・ガールと言えるアーティストなのだ。



(近藤真弥)

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《みなさまにご案内いたします この飛行機はまもなく離陸いたします シートベルトをもう一度お確かめください。》(「Hello World」)


 カナダ出身のアーティスト、ホトィンによるアルバム『Hello World』は、ベッドルームに収まりきらない想像力が爆発したハウス・ミュージックである。スチュワーデスのアナウンスで幕を開け、旅立ちの興奮を表すかのように粗々しいビートが鳴る表題曲にはオープニングを飾るに相応しい壮大さが宿り、続く「Ghost Story」は、ドラムマシーンのタムを多用したシカゴ・ハウスなリズムのうえで、柔らかいシンセ・サウンドが優雅に舞う心地よい曲。ここまでくれば、あなたはもう『Hello World』の住人。ラストの「Why Don't We Talk」まで、甘美で流麗な電子音に身を任せることになる。


 先にも書いたように、このアルバムはハウス・ミュージックを基調に作られたものだ。しかし、全曲にシカゴ・ハウスのラフで快楽的なリズム・パターンを取り入れながらも、アシッディーな音色を打ち出した「Infinity Jam」、柔らかいパッド音が幽玄に響く「Fight Theme」といった具合に、本作におけるホトィンは曲ごとにシンセの使い方を巧みに変えていくことで多様さを生み出している。ゆえにビートから実験精神を窺えないのが欠点といえば欠点だが、そうした欠点を補うように、聴き手をチル・アウトにいざなうサウンドスケープの魅力が本作を包みこんでいる。


 それにしても、そんなサウンドスケープが『Selected Ambient Works 85-92』期のエイフェックス・ツインや、《Planet Mu》主宰のマイク・パラディナスによるµ-Ziq(ミュージック)といった、いわゆるIDMを連想させるのはなんとも興味深い。例えば、ローンは『Reality Testing』、そしてフォルティDLは『In The Wild』において、それぞれ自らの感性と解釈を通したラウンジ・ミュージックを鳴らしているが、こうしたラウンジ・ミュージックの要素が『Hello World』にもある。いわば、アーティフィシャルでキラキラとした電子音によって構築された世界。とはいえ、《100% Silk》以降のテン年代インディー・ダンスの文脈にある『Hello World』に対し、『Reality Testing』や『In The Wild』は、《Brainfeeder》がヒップホップとジャズの新たな関係性を提示したあとの流れに存在するという差異はあるのだが。


 しかし、"ラウンジ・ミュージック" "IDM" というキーワードで『Hello World』『Reality Testing』『In The Wild』を接続できるのは確か。それはつまり、チルウェイヴの盛り上がりが収束してからしばらく鳴りを潜めていた "チル" という要素が、ふたたび浮上しつつあることの証左なのだ。




(近藤真弥)




【編集部注】『Hello World』はカセット・リリース。《1080p》のバンドキャンプではデジタル版のダウンロード販売もおこなっています。

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さて、音楽フェス・ブームなんて言葉が一般メディアでもささやかれるようになってからずいぶんたつ。そういった時期もすぎ、ここ日本でも(季節をとわず1年中)むしろ定着してきた観がある。


クッキーシーンでも、その初期...たぶんまだ00年代初頭ころ「フェスとはなんだ?」みたいな対談記事を作ったような記憶があるけれど、当時とは状況も全然変わっている。


そろそろ、「今の趨勢」にふさわしい、新しいそれをやってもいい時期では? というわけで、さる7月アタマ、新宿は歌舞伎町のはずれの安カフェで編集部3人、顔をつきあわせ、そういったブームの先駆けとなったフジロック(やサマーソニック)をメインに、あーでもないこーでもない、とおしゃべりしてきました。


フジロック2014まであと1週間という絶妙なタイミング? でアップさせていただきます!


(伊藤英嗣)


このThe Kink Controversyは基本的に読者の方々からの原稿を掲載する場として作られたコーナーです(が、「関係者」が投稿することもあります)。


投稿時の主なルールは以下のとおりです。


・文字数は最低でも1000字以上。


・原稿の内容は、音楽に関することを主題にお願いします。ただ、主題と文脈的に繋げられるなら、アニメ、映画、小説、哲学など、他要素を混ぜても問題ありません。


・掲載する際には、投稿されてから10日以内に編集部のほうから連絡させていただきます。連絡がない場合は、申し訳ないのですがボツということになります。


・ライヴ写真などの画像類を掲載する場合には「権利者の許諾」が必要になります。その作業は「かなり大変」であることも少なくありません。それゆえ、申し訳ありませんが写真は送らないでください。場合によっては編集部で画像をそえることもありますが「投稿自体はテキストのみ」でお願いします。


・送っていただいた原稿の表記については、クッキーシーンにおける表記統一の決まりに合わせるため、編集部側で変えることもあります。それらがあまりに大量になったり、それによって文章のトーンが変わってしまう場合など問題があると判断した場合も、編集部のほうから連絡させていただきます。


音楽について語りたい欲求がある若者(近藤くんのような?)から、いまだ中二病が心に残っているせいで音楽にロマンを求めてしまう大人になりきれない大人(伊藤のような?:笑)まで、どんな方でも大歓迎。FEEDBACKから投稿できます。


皆さまからの熱い原稿を心からお待ちしております!

2014年7月16日

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2014年7月16日更新分レヴューです。

may.e「REMINDER」
2014年7月16日 更新
ハリネコ『roOt.』
2014年7月16日 更新
VARIOUS ARTISTS『#Internet ghetto #Russia』
2014年7月16日 更新

2014年7月7日

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2014年7月7日更新分レヴューです。

CHROMEO『White Women』
2014年7月7日 更新
PANIC SMILE『INFORMED CONSENT』
2014年7月7日 更新
white white sisters『SOMETHING WONDROUS』
2014年7月7日 更新