伊藤英嗣: December 2012アーカイブ

2012年12月30日

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2012年12月30日更新分レヴューです。

REGINA SPEKTOR『What We Saw From The Cheap Seats』
2012年12月30日 更新
MANIC STREET PREACHERS『Generation Terrorists 20th Anniverasary Edition(初回限定盤)』
2012年12月30日 更新
THE BABIES『Our House On The Hill』
2012年12月30日 更新
イツエ「優しい四季たち」
2012年12月30日 更新
DSTVV「Molly Soda EP」
2012年12月30日 更新

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音楽配信サイトオトトイ傘下TV♭(フラット)で絶賛放送中、テレヴィジョン・クッキーシーン。最新のものを中心に、それらとつながる形で、時代にとらわれず(時代を超えて)いい曲(いいミュージック・ヴィデオ)を、がんがんかけていく...というのがコンセプトです。


約50分~1時間のセット・リストが毎週木曜日22時に更新され、時間枠いっぱいに何度もリピート・ストリーミング放送中!


また、初回放送時、最初にセットリストが一巡するまで、セレクター伊藤がツイッターの個人アカウントから軽く(?)曲紹介をおこないます。


12月27日(木)~1月9日(水)に放送される第10弾セットリストは、わりと年末年始っぽいものになっている気もしますが、「明らかに」そうなのは1曲目のタイトルくらい(笑)。デス・キャブ・フォー・キューティーのそれで始まり、LCDサウンドシステムのあれで終わる、今回は全10曲で約55分。わりと長尺曲が多いですね。


年末年始にゆっくり1年をふりかえったり新しい年に思いをはせるのに、最新の曲だけ聴いてる必要もない(し、実際ニュー・リリースも少ないですしね:笑)...というわけで、2012年のものが1曲、00年代ものが5曲、90年代ものが2曲、70年代ものが2曲...というバランスになっています。


6曲目と10曲目は、ヴィデオで描かれるストーリー(のようなもの)も、なんとなく見てほしい感じです。お正月をはさむため、今回は2週間にわたって再放送がつづきます。一度でストーリー追えなかったら、たくさんある再放送で...!


放送日時は以下のとおり。


2012年12月27日(木) 22:00-24:00 ※初回放送

2012年12月28日 (金) 12:00-14:00 ※以下再放送

2012年12月29日 (土) 14:00-16:00

2012年12月30日 (日) 18:00-20:00

2012年12月31日 (月) 16:00-18:00

2013年1月1日 (火) 7:00-9:00

2013年1月2日 (水) 20:00-22:00

2013年1月3日 (木) 22:00-24:00

2013年1月4日 (金) 12:00-14:00

2013年1月5日 (土) 14:00-16:00

2013年1月6日 (日) 18:00-20:00

2013年1月7日 (月) 16:00-18:00

2013年1月8日 (火) 7:00-9:00

2013年1月9日 (水) 18:00-20:00


なお、第11弾の初回放送は1月10日(木)22時スタートです。


よろしければ、是非!


2012年12月27日8時33分(HI):更新:2012年12月29日14時23分(HI)

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昨年、ストーン・ローゼズ本の発売記念イヴェントとして開催して好評だったクラブ・カントリー、2013年の幕開けを祝して、さらに(お値段的にも)フレンドリーなDJオンリー・パーティーとして、第2弾をおこないます! 詳細は以下のとおり。


全開...いや、前回のDJ陣に、今回は気鋭の女性DJナオミさんも加わってくれました!


ぼくは「2012年にリリースされた特に好きな曲」に(テレヴィジョン・クッキーシーンで毎週やってるように)昔の曲や最近の曲をまぜる感じで、がんがんプレイしようと思ってます。


飲んで、しゃべって、踊って...。近郊のみなさん、楽しみましょう!


※タイムテーブルは以下のとおり。時間の微妙なずれなど、多少の変更はあるかもしれませんが。

<小出 16:30〜17:15 → 藤原 17:15〜18:00 → 伊藤 18:00〜18:45 → 山口 18:45〜19:35 → 高須 19:35〜20:25 → Naomi 20:25〜21:10 → 伊藤 21:10〜21:55>

なお、伊藤のふたつのDJタイムの狭間および終演後しばらくのあいだ、クッキーシーン・ロゴ缶バッジと、上記書籍(ストーン・ローゼズ本)を会場で販売します。売り子は伊藤自身(笑)。当日会場で書籍をご購入いただけた方には、缶バッジを1個サービスサービスゥ! すでに当該書籍をお持ちで缶バッジ希望の方がいらっしゃれば、当日ご持参ください。同じく1個、進呈させていただきます!【1月12日17時22分追記】



club_country_130113.JPGのサムネール画像のサムネール画像

Cookie Scene presents

Club Country

New Wave, Post Punk, Neo Acoustic, Mad Chester, Shoegazer and more


日時:2013年1月13日(日)

   16:30~22:00

料金:1,000円(1ドリンク付)


場所:名古屋 栄 喫茶デシベル

   052-243-7525

   http://decibel8.com/shop-info.htm


DJs

伊藤英嗣 (COOKIE SCENE)

高須寛 (Dolce Vita)

山口真輝 (pop satori)
藤原寛之 (The Welks)

小出雄司 (HUSH)

Naomi (stillvirgins)




2013年1月4日16時19分(HI)

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音楽配信サイトオトトイ傘下TV♭(フラット)で絶賛放送中、テレヴィジョン・クッキーシーン。最新のものを中心に、それらとつながる形で、時代にとらわれず(時代を超えて)いい曲(いいミュージック・ヴィデオ)を、がんがんかけていく...というのがコンセプトです。


約50分~1時間のセット・リストが毎週木曜日22時に更新され、時間枠いっぱいに何度もリピート・ストリーミング放送中!


また、初回放送時、最初にセットリストが一巡するまで、セレクター伊藤がツイッターの個人アカウントから軽く(?)曲紹介をおこないます。


12月20日(木)~12月26日(水)に放送される第9弾セットリストは、クリスマスを意識したものになっているか、なっていないか、それは見てのお楽しみってことで(いや、あまりそうはなってない気もしますが:笑)。なんとなくR.E.M.に始まってMGMTで終わる、全15曲。2012年のものが6曲、2010年のものと00年代ものが1曲づつ、90年代ものが2曲、80年代ものが4曲、70年代ものが1曲というバランスになっています。


放送日時は以下のとおり。


2012年12月20日(木) 22:00-24:00 ※初回放送

2012年12月21日(金) 12:00-14:00 ※再放送

2012年12月22日(土) 20:00-22:00 ※再放送

2012年12月23日(日) 20:00-22:00 ※再放送

2012年12月24日(月) 20:00-22:00 ※再放送

2012年12月25日(火)     3:00-7:00 ※再放送

2012年12月26日(水) 21:30-24:00 ※再放送


なお、第10弾の初回放送は12月27日(木)22時スタートです。


よろしければ、是非!


2012年12月20日17時47分(HI)

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MEMORY TAPES.jpg

 チルウェイヴとは鑑みるに、そもそも、10年代に入り、持ち上がってきたタームで定義的には不精確なところもある。サウンド的には微睡むような特徴的なシンセ、ディレイのきいた甘美なサウンドスケープ、更には、どことなく、ローファイでベッド・ルームから零れだしてくるようなある種の逃避たる行為性であったかもしれず、ヒプナゴジック・ポップ(≒入眠作用のある音楽)と評される側面どおり、その揺れる音像の中に意味がある、そんな印象も受ける。


 加え、現代らしくネットを介しての拡がりが背中を押し、ライヴ・パフォーマンスそのものよりも呈示されるサウンド自体の精度、何らかの失われたムーヴメントだったのかもしれない気がする。しかし、ウォッシュト・アウト、スモール・ブラック、ネオン・インディアン辺りのアクトと並び、セカンド・フェイズに入ったと思われるトロ・イ・モアが新作にて踏み込んだ端整で流麗なメロウでジャジーな世界観と比肩してUS、ニュージャージー出身のデイヴィ・ホークのソロ・プロジェクトことメモリー・テープスの1年半振り、3作目となる新作『Grace / Confusion』において磨かれた音世界は、明らかにチルウェイヴ「以降」の、しかし、濃霧の中にコクトー・ツインズからスクリッティ・ポリッティ辺りの80年代的な音響美、アンビエンスと細かいビートの狭間を行き交う稚気と穏やかな内省が少し深まり、ただ、どことなく漂う淡くも美しいメランコリアが根をはり、前作『Player Piano』の仄かな明るさとポップネスを想像していると、覆されるところがある。


 彼岸的でありながら、サイケデリアに攪拌される冒頭の「Neighborhood Watch」、まるで、デデマウスのような子供の嬌声のカット・アップにシンセがたおやかに絡む「Thru The Field」の流れで掴まれる感触は、これまで通りの心地良さもあるが、柔和なフックがある。同時に、彼の繊細なヴォーカリゼーションが彩味を加えており、長尺の曲を含めて一気に聴き通せる内容になっていながらも、タイトルが優美(Grace)と混乱(Confusion)で引き裂かれているとおり、最終着地点はそのどちらでもない、茫漠な気配が前景化するのも興味深い。


 これまでの文脈通りのチルウェイヴ、ヒプナゴジック・ポップと捉えるにはメモリー・テープスたる記名性が浮かび上がり、確実に新しい一歩を刻印という意味で、これからこのサウンドを巡って、どういった定義、更新がされてゆくのか、新しい時代の始まりの新しい音楽の息吹を感じる。


 最後に、幾重にも重ねられた優美なサウンド・レイヤーとトライバルなリズムが残る6曲目のタイトル「Follow Me」が象徴的だという気がする。微睡んでいる中で見る現実は、ずっと醒めないままで、夢から抜け出たあとに、もう一度、ビート(鼓動)が脈打ち始める。



(松浦達)

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BURIAL「Truant」.jpg

 ブリアルという存在のほとんどは、彼が生みだす音楽を聴いた者の副次的イメージで形成されている。それはブリアルの高い匿名性ゆえだと思うが、そんなブリアルの在り方は、音楽はひとりひとりの捉え方によって違う形を見せるものであり、それらすべてが一側面であることを思い出させてくれる。人々にどう受けいれられ、価値を与えられるかなんて、誰も制限できない。


 それは作り手も例外ではない。作り手は、受け手が音楽を聴いた際の考えや思いに対して疑問を持つことはできても、否定し排除することは難しい。言ってしまえば、聴き手の頭のなかにある音楽も作品なのだ。


 だとすれば、すべてをわかりあうなんてことはありえないのかも知れない。ただ、この壁にぶち当たり諦念を抱いてしまうか、それとも"わかりあえないことをわかりあおう"と前向きに捉えるかで、歩む道は分かれるはず。そして、頑なに匿名性を保ち、聴き手の解釈が入りこむ余白を生みだすブリアルは、後者ではないだろうか。つまり、それぞれの解釈によって多様化が進み、そのことで生じる可能性をブリアルはポジティヴに捉えている。謂わば"思考のひとり歩き"に対して寛容で、そうした状況が音楽という文化に豊穣さをもたらすと考えている。


 こうした考えは、アンディー・ストットシャックルトン、それからジェームズ・ブレイクらが断片となることで、徐々に広まっているように見える。いま挙げた者たちは、音楽の記号化に抗うような溶解的サウンドスケープを描き、己の残り香を消し去って音楽そのものになろうと試みているからだ。この試みから筆者は、ブリアルの遺伝子を感じとってしまう。


 というわけで、ここまで書いてきたことは、2012年の年末に突如届いたブリアルの全2曲入りシングル「Truant」以前の風景だが、本作はその風景と地続きになっている。ブリアルにしてはユーフォリックな仕上がりだけど、深層意識に潜るディープな世界観や、幽霊の如く漂うヴォイス・サンプルは健在だ。とはいえ、「Rough Sleeper」にはこれまでのブリアルが見せなかった側面もある。


 まず、闇から光へ向かうような高揚感。光の先を見せてくれるわけではないが、光から遠ざかるような音を鳴らしていたこれまでのブリアルからすると、明らかな変化だと言える。そして何より、ビートが力強い。もちろん従来の繊細美も相変わらず存在している。しかし、12分50秒あたりから鳴らされるテンション高めのビートは、抑えきれない凶暴性を発露しているようで、何度聴いても惹きつけられてしまう。多くの者は、"怠け者"という意味深なタイトルを掲げた「Truant」に興味を抱くのかもしれないが、今後のブリアルを考えるうえでは、「Rough Sleeper」のほうが興味深い音を鳴らしている。あの凶暴性には、そう思わせるだけの異質な雰囲気がある。



(近藤真弥)

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KEN STRINGFELLOW.jpg

 2012年の年末、僕はこのアルバムを繰り返し聴いていた。ケン・ストリングフェロウ、その名前は音楽好きにとって当然「ポウジーズのケン」であったり、アレックス・チルトンの伝説的なパワー・ポップ・バンド、ビッグ・スターの復活に正式メンバーとして一役買った男としても思い出されるだろう。そして『Reveal』や『Around The Sun』、『Accelerate』など、後期のR.E.M.では準メンバーとして、レコーディングやツアーに参加していたことも。クッキーシーンのアーカイブを辿ってみると...、やっぱりあった! モンゴルのロック・バンド、ハンガイ(HANGGAI)のプロデュースもケンの仕事だった。他にもニール・ヤングからハーフ・ジャパニーズのジャド・フェアとのコラボレーションまで。「ケン・ストリングフェロウって誰よ?」っていう人も自宅のCDやレコードのクレジットをチェックしてみれば、彼の名前を見つけられるかもしれない。その活動は本当に多彩で(もちろん、僕もすべては追っかけきれていないけれど)素晴らしい作品ばかり。


 「さて、職人気質の良い仕事もアレだけど、そろそろオレも...」と思ったかどうかは知らないけれど、ソングライター/フロント・マンとしての活動も活発になってきた。2011年にはポウジーズの7thアルバム『Blood / Candy』をリリース。バンドとしては、約5年ぶりの来日公演も実現した。そして、ソロでは(ミニ・アルバムやコラボ作を除くと)8年ぶりとなる4thアルバムが国内盤としてリリースされた。


 『Danzig In The Moonlight』と名付けられたこのアルバムは、月明かりに照らされた町と海のアート・ワークが印象的。『ダンシング・イン・ザ・ムーンライト』ではなくて、『ダンジグ・イン・ザ・ムーンライト』だから、間違えないように! ダンジグとは、元ミスフィッツのグレン・ダンジグ...とは関係なくて、ポーランドの港町の名前。"ダンチヒ"が正式な読み方だけれども、英語では"ダンジグ"とのこと。なるほど、ティム・バートンの映画みたいにちょっぴりダークなビジュアル・イメージがぴったりの14曲(国内盤はボーナス・トラック4曲収録の全18曲)が並ぶ。従来のケンは、パワー・ポップ/ギター・ポップというイメージが強いけれど、このアルバムは奇妙なユーモア(ダジャレ!)と異国情緒(レコーディングはブリュッセルのICPスタジオで行われた)が表現されたタイトルそのままに、バラエティ豊かな仕上がりとなっている。


 流麗なストリングスと音数を抑えたピアノに寄り添うようなメロディから、意外な展開で一気に聴かせる「Jesus Was An Only Child」でアルバムは幕を開ける。続く「110 Or 220v」はソロのニール・ヤングを思わせるカントリー調。アコースティック・ギターとハーモニカの響き、曲をリードするリム・ショットの軽やかなビートが心地良い。壮大なピアノ・バラッド「History Buffs」とアコーディオンが楽しげに鳴り響く「You're The Gold」のコントラストも鮮やか。ソウルフルなアレンジと歌声を聴かせる「Pray」には年季の入ったファンもびっくりするはず。「4 am Birds - The End Of All Light / The Last Radio」は、なんと狂ったバカラック(!)みたいな組曲。そして「Doesn't It Remind You Of Something」には、ザ・ヘッド&ザ・ハートの女性シンガー/バイオリニストのチャリティー・ローズ・シーレンが参加。アコースティックなサウンドに抱かれたロマンティックなデュエットも聞きどころのひとつ。


 耳を澄ませば、人懐っこいメロディの向こう側にR&B、ビートルズ、カントリー、AOR、そしてポスト・ロックまでもが息づいていることに気付く。これだけアプローチの違う楽曲を纏め上げる手腕にこそ、今までのソングライター/アレンジャー/プロデューサーとしての経験が活かされているのだと思う。"ダンシング=踊る"ではなくて、月明かりの中をゆっくりと散歩するようなミドル・テンポの曲調がどれも優しい。年は明けて2013年になったけれども、僕はこのアルバムをこれからもずっと聴き続ける。ヘッドフォンから聴こえる曲たちは、見慣れた夜の町を月明かりのように少しだけ明るく照らしてくれるから。ポップ・ミュージックという魔法、2013年はそれをライヴで体験したいな。ケン・ストリングフェロウの来日が実現しますように! それが新年の願い事。



(犬飼一郎)

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FALTY DL『Hardcourage』.jpg

 《Not Not Fun》や姉妹レーベルの《100% Silk》などが中心となって、去年爆発的な広がりを見せたインディー・ダンスだが、筆者もその爆発に引きこまれたひとりだ。インディー・ダンスの何が面白かったのかを振り返ってみると、様々な音楽を解体し再構築することで、新たな文脈/歴史を築こうとする熱意みたいなものを感じたからだと思う。


 90年代初頭のハウス・ミュージックとバレアリックな熱狂を纏い、アマンダ・ブラウンやアイタルといった、元々ダンスフロアとは程遠い音楽を鳴らしていた者が中心にいたのも面白かった。インディー側のダンスでも、ダンス側のインディーでもない、あらゆる要素がそれぞれの定義を曖昧にしながら交わっていくインディー・ダンスという音楽は、90年代から布石が打たれ、その後のネット文化によって加速された"過去/現在" "古い/新しい"といった価値観の無効化を決定づけるトドメを祝福的に鳴らしていたし、こうした状況を肯定する者は、インディー・ダンスに寄り添うような音楽性を機微ながらも滲ませていた。


 その機微が本作にもある。本作は、フォルティーDLことドリュー・ラストマンによる《Ninja Tune》移籍後初のアルバムで、UKガラージ、ダブステップ、ハウスといった音楽を再解釈し、それらを有機的に混ぜあわせていた従来の感覚を深化させた内容となっている。初期IDMを彷彿とさせるサウンドスケープのなかを、力強いビートが突き進む「Stay I'm Changed」は、ドリューが新たなフェーズに突入したことを告げるに十分なオープニング・トラックであり、続く「She Sleeps」も、耽美なグルーヴが心地よい陶酔感を生みだしていて、ドリューの新たな側面が窺える。


 「She Sleeps」ではフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンをゲストに迎えているが、フレンドリー・ファイアーズといえば、《Ramp》などからリリースを重ねるステイ・ポジティヴとたびたび共演していて、そういう意味では《Ramp》周辺と言えなくもないのだけど、ドリューも実は《Ramp》からリリースをしている。偶然とはいえ、ドリューとエドのコラボレーションに《Ramp》という共通点を見いだせるのは面白い。《Ramp》はベース/ビート・ミュージックを語るうえで欠かせないレーベルだが、その点で本作は、これまでの様々な潮流が集う作品でもある。


 さらにはアンディー・ストットゲリー・リードと共振するインダストリアルな質感を取りいれるなど、トレンド・セッターとしての審美眼も発揮している。とはいえ、流行の音楽的要素をただ寄せあつめたのではなく、それらをアルバムという表現フォーマットに上手く落としこんでいるのはさすが。そして、溶解的音楽が展開されている本作は、トレンドだけでなく、これからの音楽の在り方も示している。



(近藤真弥)

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 4人組のパンク・バンド、ザ・メンのサード・アルバムとなる本作『Open Your Heart』を聴けば、初めてロックンロールに触れて真っ白になった時の記憶が蘇る。とことん痺れ、この作品を聴いた誰もから、ロックは死んだだとか、生きているだとか、よく分からない言葉を発する口は消え失せて、ぐうの音も出ないであろう。ロックにまつわる哲学性や神格化など、どうでもよくなる。


 鬼気迫る轟音の熱は冒頭曲「Turn It Around」からして沸点に達し、聴き手の鼓膜をまっすぐ刺す。ダイナソーJrがマイ・ブラッディー・ヴァレンタインの『Loveless』を訳も分からず強引に真似てしまったようなサウンドは、触れれば破裂してしまう程の迫力があり、どこをどう聴いても飼いならされた音はない。四方八方から聴き手に掴みかかるギター・ノイズ、スティックが折れそうな程のドラムの鳴りがラモーンズのように痛快に突き抜ける。空気を斬るようにファズが飛び交い、シャウトが強靭に響く。とにもかくにも破れかぶれだ。このバンドは安全なロック・ミュージックに流れない。むしろ安全なロックってなんだ? という勢いなのだ。「分かってほしい」ではない。「分からせてやる」という意気込みが、ひたすら強く鳴っている。


 ブルックリンのバンドではあるのだが、ジーザス&メリー・チェインやスワーヴドライヴァー、デヴィッド・ボウイなどの音楽性を取り込むというUK志向。しかし、ザ・メンは取り込みつつも、ハードコアやカントリーなどとごちゃ混ぜにして鳴らしてしまう。溢れ出てくるアイデアを設計図なしで振り撒いているのだ。その意味で、ザ・メンの勢いとは、同じくブルックリンのバンドであるTV・オン・ザ・レディオとはタイプが違い、様々な音楽要素をごった煮のまま何のためらいもなく吐き出せるところにある。その原初性に僕は震えた。


 意識的に雑然としたさまを雑然と鳴らしているのかもしれないと思ったが、しかし、彼らの音楽に計算性はない。どのような音楽要素も取り込めるのだろうが、そのポテンシャルの高さを自分たちでは整頓できず、整頓できない不器用さが潔くそのまま表れている。しかもマンサンのような妖艶さすら熱として鳴らす。それが聴き手の体温を一気に上げ、端的に言って、かなり燃える。何らかの分析を必要とする音楽はあるが、分析する必要のない音楽や、情報を必要としない音楽があるのも確かで、まさに『Open Your Heart』がそれなのだ。「ロックを聴くことって、打ちのめされることだよね」というドン・マツオの言葉が頭に浮かんだ。


 音楽に飲み込まれたいと思ったら本作を手に取ればいい。こういった思考では追いつけない作品が生まれるから創造は未知の領域を広げ続ける。聴けば、リスナーにとって、自分が知識で音楽を聴いているのか、感覚で聴いているのか、あるいは別の何かで聴いているのかというような自分の聴取スタンスがくっきりと表れるだろう。ある意味、踏み絵のような作品と言える。ちなみにこのバンドについて、アジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤は将来性のあるバンドだと言っている、という噂を聞いた。仮にそうならば、僕は違うと思う。ザ・メンは今しか生きることのできないバンドだ。「今」にしか賭けることができない。その「今」という瞬間に少しでも近づきたい一心で、ザ・メンはロックを鳴らす。鳴らさずにはいられないのだ。このサウンドに痺れなければ嘘だと思う。



(田中喬史)

2012年12月17日

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2012年12月17日更新分レヴューです。

空気公団『夜はそのまなざしの先に流れる』
2012年12月17日 更新
【合評】スッパバンド『KONTAKTE』
2012年12月17日 更新
GERRY READ『Jummy』
2012年12月17日 更新
THE CHAP『We Are Nobody』
2012年12月17日 更新
DOMENICO『Cine Prive』
2012年12月17日 更新
工藤鴎芽「梔子e.p.」
2012年12月17日 更新
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