TRACEY THORN『Solo: Songs And Collaborations 1982-2015』(Caroline / Hostess)

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 寂しさに心を支配され、何かにすがりたいという気持ちになったとき、ひたすらポジティヴな歌声よりも、陰りがある歌声を求めてしまう。単一的なポジティヴィティーよりも、哀しみも含む多彩な感情表現のほうが、心に潤いをもたらしてくれるから。例をあげると、エコー・アンド・ザ・バニーメンのイアン・マッカロク、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティス、そして、エヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンなどなど。仕事柄、家から遠く離れた場所へ行くことも多いが、どこへ行くにしても、いま挙げた3人の作品は必ず持ち歩くようにしている。


 その3人のなかのひとり、トレイシー・ソーンが、ベスト・アルバムをリリースした。名は、『Solo: Songs And Collaborations 1982-2015』。本作は彼女のソロ活動に焦点を絞り、オリジナル楽曲を集めたディスク1、他のアーティストとコラボした曲やリミックスをまとめたディスク2の計2枚で構成されている。エヴリシング・バット・ザ・ガールはもちろん、かつて彼女が在籍していたバンド、マリン・ガールズの楽曲も収録されていない。もしかすると、この点に批判的な人も少なからずいるだろう。


 しかし、優れたソングライターとしての側面、さらに魅力的な歌声を持つヴォーカリストとしての側面を存分に堪能できるという意味では、とても素晴らしい作品だと思う。ディスク1は、まだオリジナリティーを確立するには至っていない初期の楽曲から、成熟を感じさせる深い楽曲まで、実にさまざまな面を披露してくれる。ただリリース順に並べたわけではなく、作品としての流れを重視した曲順なのも、彼女の強いこだわりが感じられる。彼女のソロ作品をコンプリートしている者も、新鮮さを感じる内容だと思う。


 ディスク2では、彼女の歌声が持つ高い順応性を見せつけられる。マッシヴ・アタック「Protection」から始まり、ラストのアダムF「The Tree Knows Everything」まで、ディスコ・クイーンなトレイシー・ソーンを楽しむことができる。あるときは冷ややかに、あるときは柔らかく、そしてあるときは優しくといった具合に、いろんな感情が渦巻いている。特筆したいのは、ジ・エックス・エックス「Night Time」のカヴァー。原曲はダークでメランコリックな曲調だが、彼女はそのメランコリックな部分を受け継ぎつつ、より華やかな景色を描いてみせる。



(近藤真弥)



【編集部注】国内盤は11月13日リリース予定。

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