ONEOHTRIX POINT NEVER『Garden Of Delete』(Warp / Beat)

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 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン。彼の音楽にこそ、孤高という言葉が相応しい。ビートに依拠することなく、エフェクトや奇異な音響空間によってグルーヴを生みだしていくそのスタイルは、多くの人を驚かせた。ゆえにフォロワーが続出してもおかしくないが、いまのところ、〝OPNフォロワー〟と明確に言えるアーティストは現れていないように思う。彼の作品を聴いて、エフェクトの使い方や音響空間の作り方を模倣することは可能だろう。だが、こちらの予想をことごとく裏切りながら、音の抜き差しをしていくあのセンスは、ダニエルだけの特権。だからこそ彼は、同時代性や流行にとらわれない場所で、驚きに満ちた音楽を鳴らしている。


 そんなダニエルの最新アルバム『Garden Of Delete』は、自ら同時代性に接近したという意味で、非常に興味深い内容だ。実は筆者、本作についてダニエルに質問をする機会があった。その答えのなかで特に面白かったのは、テイラー・スウィフトはクールだと感じていること(それ以上にクールなのは初音ミクだそう)、そして、ナイン・インチ・ネイルズとツアーしたのがインスピレーションになったということ。また、自分なりのポップ・ソングを作ろうとしたという話にも、驚かされた(※1)。


 ダニエルは本作を作るにあたって、お金がたっぷり注ぎこまれたビッグなポップ作品に関わっている人たちとのコラボレーションも考えたという。しかしダニエルいわく、そのような人たちは会おうともしないらしく、クレジットのことしか頭にないらしい。文字通り、怒り爆発。こうした反骨精神が、本作には多分に含まれている。その結果生まれたのが、ダニエルなりのポップ・ソングを詰めこんだ本作というわけだ。


 この怒りについて、もう少し掘りさげてみる。まず、ダニエルの音楽的嗜好は、実に多様だ。本作を作るヒントになったアーティストやバンドに、オウテカ、ブラック・サバス、ナイン・インチ・ネイルズなどを挙げ(※2)、先にも書いたように、テイラー・スウィフトや初音ミクも好む。同時に、本作でもサンプリングされている、90年代のインダストリアル・バンドであるグロータスや、クラシック音楽家ジョン・アダムスの作品も聴く。音楽に対して寛容な姿勢を持つダニエルからすれば、クレジット云々を気にする輩の思考回路などナンセンスだろう。そこには、寛容性に繋がる自由がないからだ。そう考えると、本作のアグレッシヴなサウンドは、その自由を称揚しているようにも聞こえる。


 本作は果たして、どのカテゴリーに入るのか。テクノ? アンビエント? ノイズ? メタル? IDM? 答えは、そのすべて。そのすべてが、本作にはある。どこまでも細切れにされ、撹拌された形で。ダニエルは、既存のセオリーや常識にとらわれない。当然、メジャー/インディーという形骸化した二項対立にも。むしろ、そうした安易な構図やレッテルから抜けだそうと常に試みる。そのためには、聴き手の予想だって裏切ってみせる。なんとも痛快じゃないか。


 この痛快さからわかること。それは、ダニエルもまた、「既存の価値観や固定観念を解きほぐす存在」だということ。ん? この言葉、どこかで書いた記憶が...。そう、グライムス『Art Angels』のレヴューでしたね。ダニエルとグライムス、共通点も多い。ナイン・インチ・ネイルズやテイラー・スウィフトが好きで、共に最新作ではど真ん中のポップ・ソングに接近し(ダニエルのそれは、かなりひねくれた形だけども)、その作品を同じ年にリリースしている。これ、面白い共振だと思いませんか? 


 本作はアルカよりも、グライムスやテイラー・スウィフトと一緒に語ったほうが、より多彩な表情が浮かびあがると思う。



(近藤真弥)




※1 : 『bounce』385号掲載、筆者によるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの記事を参照。



※2 : 『ミュージック・マガジン』2015年12月号掲載、筆者によるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの記事を参照。

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