ELO『Jeff Lynne's ELO - Alone In The Universe』(Columbia / Sony Music)

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 子供のころ、自分が50歳以上まで生きられるなんて思ってなかった。いや、それは大げさにしても、当時の親の年齢(30~40代)以上の自分の姿など想像もできなかった。まあ、今現在70代とか80代である親が、ときどき「自分らは先が長くないからねえ」とか言う辛気くささがちょっと鼻につくこともあるし、生き死にの話はこれくらいにしておこう。とにかく、そんな感情を持っていたガキ、思春期のころから夢中になって聴いていたELO、エレクトリック・ライト・オーケストラ、もっと正確に言えば今回は中心人物自らの名前を冠したJeff Lynne's ELO待望のニュー・アルバム。1曲目が「When I Was A Boy」ゆえ、つい先ほどのようなことを言いたくなってしまった(笑)。そして、その曲の素晴らしさに度肝を抜かれた。


 今回は前作『Zoom』から約15年ぶり、前々作『Balance Of Power』から約30年ぶり。もちろん70年代初頭から、ジェフ・リンがプロデューサーとしてもスーパー・ビッグになってしまった80年代後半(つまり前々作のころ)までは、2~3年に1枚という普通のペースでアルバムを出していた。


 こういうパターンだと、最も心配されるのはレイド・バックしちゃってること。まあ「枯れた味」というニュアンスでの褒め言葉的に使うこともあるロックの世界ではいいのかもだけど、ガキのころにパンクを通過した自分は、それが少々苦手。そしてポップ・ミュージックがレイド・バックしたら、かっこわるくない? とりわけ、デビュー時からずっと、その都度の先端電気技術とオーケストラルな大風呂敷感をうまく融合させつつ、いい意味での売れ線ポップ・ロックをやってきた彼らにとっては。


 冒頭曲を聴いて、そんな杞憂はふっとんだ。ぼくのような年増耳を持つ者は、「ちょい待ち、これ、ELOっつーより、ビートルズっぽくないですか? あっ、でもそれはジェフがからんだときのやつだわ。だから、あれ、ビートルズの『アンソロジー』プロジェクトで、残された未発表曲をジェフがプロデュースしたときの...」なんて連想が一瞬にして頭をかけめぐってしまう。


 ELOにせよ、ポール・マッカートニー自身のウィングスにせよ、70年代時点でのポップ志向ロックはどうしても解散済のビートルズと並べられ、「それに比べりゃ、ださくない?」と評されがちだった。ジェフはインタヴューなどでビートルズに対する深い愛を口にしていただけに、なおさらのことだ。しかし、逆に今となっては、そして「When I Was A Boy」なんて曲でこれをやられると、逆にかっこよすぎ。だって、そうでしょ? ジェフはある意味、子供のころの夢のひとつを、たとえばビートルズ本体とからむようになった80年代後半から90年代前半にかけて、堂々とかなえてしまったのだから。それを、決して自慢げにではなく、むしろちょっとばかり儚げな情感もこめて、それでも堂々と歌っている。なんて、かっこいいジジイなんだ。


 アルバム全体のサウンド/アレンジ的には、まるで当時のトラウマをかき消すように、そろそろ「最先端であること」が厳しくなってきた『Secret Messages』(1983年)の「骨太さ」と、『Balance Of Power』における「身軽さ」が、実にほどよくブレンドされ、かつてジェフもメンバーとなっていたトラヴェリング・ウィルベリーズに通じる部分もある。少なくとも80年代以降のELOの最高傑作であるとは即座に断言できる。


 さらにいえば、タイトルとアートワークが...。


『スター・ウォーズ』でもりあがる世間を尻目に、その第一弾とほぼ同時期に公開されたSF映画『未知との遭遇』のキャッチ・コピー、「We are not alone(我々はひとりぼっちじゃない:人類は宇宙/世界で孤立してるわけじゃない)」を思いだす。それへの、ちょっと皮肉っぽい返答になりえている。いや、そうとも言いきれない。だって、カヴァー(ジャケット)写真では、ちゃんと「誰か」が迎えにきてくれてるじゃないか。


 70年代後半当時、『スター・ウォーズ』派というより、どちらかといえば『2001年宇宙の旅』『宇宙大作戦(スター・トレック)』『未知との遭遇』派だったぼくは思う。ちょっと、見事すぎじゃね? 泣きたくなるほど、いい意味で。



(伊藤英嗣)

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