KING MIDAS SOUND / FENNESZ『Edition 1』(Ninja Tune / Beat)

| | トラックバック(0)
KING MIDAS SOUND : FENNESZ『Edition 1』.jpg

 ザ・バグとしても有名なケヴィン・マーティン、詩人のロジャー・ロビンソン、在英日本人キキ・ヒトミの3人による、キング・ミダス・サウンド。そんな彼ら彼女らが、坂本龍一との共演などでも知られる、クリスチャン・フェネスとコラボレーションしたアルバムを発表。『Edition 1』と名付けられたそれは、『Mezzanine』(1998)までのマッシヴ・アタックや初期のポーティスヘッドを想起させる、耽美的かつダークなサウンドスケープを描いた良作になっている。


 『Edition 1』は、これまでフェネスが残してきた、サンプル・ネタやギター・トラックといった未発表の素材を、キング・ミダス・サウンドが使用し制作された。ゆえに本作は、キング・ミダス・サウンドの音楽的嗜好が色濃く反映されているように感じる。たとえば、リフレインされるベース・ラインが印象的な「On My Mind」と、先行公開された「Waves」の2曲。共に清涼なアンビエンス・サウンドを漂わせる曲だが、曲全体にまとわりつくミステリアスな雰囲気は、キング・ミダス・サウンドの作品群でよく見かける要素だ。特に、『Dummy』(1994)期のポーティスヘッドを連想させる「On My Mind」は、キング・ミダス・サウンド流ポップ・ソングとも言える作風。


 また、「Loving Or Leaving」という曲も、キング・ミダス・サウンドの音楽的嗜好が強く出ている。この曲でのヘヴィーな低音、ダビーなディレイとリヴァーブの使い方、そしてトラップの要素を取りいれたビートは、フェネスの作品群ではあまり見られないものだ。このように本作は、キング・ミダス・サウンドがイニシアチブを握っていると思われる。


 正直、コラボレーションによって生じる突発的な化学反応という点から見ると、本作は及第点以下だろう。しかし、ここではないどこかへ聴き手を飛ばし、一種の精神拡張をもたらしてくれるという点においては、最高のアルバムである。ひとつひとつの音が、心の奥深くにじんわりと潜りこんでくる感覚は、至上の快楽そのもの。この快楽は、ヘッドフォンでひとり聴くだけでも味わえるが、できるだけ大音量で流し〝浴びる〟ように聴いたほうが、より深く味わえる。それこそ、クラブのサウンドシステムなどが、本作の音像をもっとも明確に伝えてくれるはずだ。このあたりは、やはりキング・ミダス・サウンドはクラブ・カルチャーの歴史が生みだしたグループなのだなと実感させてくれる。



(近藤真弥)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: KING MIDAS SOUND / FENNESZ『Edition 1』(Ninja Tune / Beat)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/4147