KATE SIMKO & TEVO HOWARD『PolyRhythmic LP』(Last Night On Earth)

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 今年も残すところ、あと2ヶ月と数日。ライヴハウスやクラブに行けば、「今年面白かった音楽は?」と訊かれ、映画館に行けば「今年最高だった映画は?」という話で盛りあがる。


 映画の話は後日するとして、ここでは音楽の話を。今年は、ハウスのレコードにグッとくることが多かった。たとえば、ルーマニア出身のメロディー(Melodie)。彼が今年リリースした「Influences EP」は、巧みな音の抜き差しが生みだすグルーヴを堪能できる、素晴らしい作品だ。ここ数年、日本では〝ルーマニアン・ミニマル〟という言葉と共に、ペトレ・インスピレスク、ラドゥー、ラレッシュといった、ルーマニアのテクノ/ハウス・シーンで活躍するアーティストをよく見かけるようになったが、こうした流れの新しい芽がメロディーである。掘れば掘るほど、ルーマニアのテクノ/ハウス・シーンの奥深さを実感する今日この頃。


 とはいえ、ハウス・ミュージック誕生の地、アメリカも負けてはいない。事実、ケイト・シムコとテヴォ・ホワードによる『PolyRhythmic LP』は、今年リリースされたハウス作品のなかでは群を抜いた出来である。本作には、ふたりともシカゴ出身ということもあり、「Exotica Exhibition」など、音数が少ないラフなビートを打ちだしたシカゴ・ハウスも収められている。だが、洗練さの極みを見せつける「No Regrets」こそ、本作のハイライトだ。優雅な心地よさをまとうシンセから始まり、そこからキック、ハイハット、ヴォーカル、タム、クラップといった具合に、音が加えられるたびに増していく高揚感は絶品。多くの人々が集うダンス・フロアはもちろんのこと、ドライブのお供に最適なポップ・ソングとしても機能する。


 また、TB-303風の音が織りなすベース・ラインと、メタリックでキラキラとしたシンセ・フレーズが反復される「PolyRhythmic Theme」は、いなたい雰囲気を醸すあたりがイタロ・ディスコみたいで面白い。とは言っても、細かく刻まれるハイハットとリムショットが印象的なビートは、シカゴ・ハウスそのものだ。TB-303といえば、「Fall」は「PolyRhythmic Theme」以上にTB-303風の音を前面に出したトラック。それは文字通りアシッド・ハウスと呼べる内容だが、ピアノ・リフ、シンセ・ストリングス、ライド・シンバルの3つが上品に鳴りわたる様は、ラリー・ハードのディープ・ハウスに通じるものを感じさせる。


 このように本作は、一口にハウス・ミュージックといっても、さまざまなタイプのトラックを楽しむことができる。さながら、絵柄が矢継ぎ早に変わる万華鏡のようなもの。耳が喜び、心が躍るハウス・ミュージックを求めるあなたに、本作をオススメしたい。



(近藤真弥)

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