DISCLOSURE『Caracal』(PMR / Island / Universal Music)

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 ガイとハワードのローレンス兄弟によるディスクロージャーが、サム・スミスをヴォーカルに迎えたシングル「Latch」(2012)で注目されてから約3年。この3年の間でふたりは、ポップ・スターへの階段を駆けあがった。ファースト・アルバム『Settle』(2013)は本国イギリスでチャート1位を獲得し、その後メアリー・J. ブライジとも共演した。


 また、Moshi Moshi(モシ・モシ)から発表されたデビュー・シングル、「Offline Dexterity」(2010)の頃から追いかけている筆者としては、ふたりの音楽性が変化したことにも注目したい。実を言うと、「The Face EP」(2012)までのふたりは、UKガラージが基調にあるサウンドを鳴らしていた。しかし、「Latch」以降のふたりは、ハウスやR&B色を前面に出してきた。そのおかげで、ふたりの音楽はポップ・ソングとしての訴求力を獲得し、世界的な人気を得ることにも繋がった。クラブだけでウケるプロダクションではなく、より幅広い層に届く順応性こそ、ふたりが選んだ道なのだ。


 セカンド・アルバム『Caracal』は、その道を突きつめた〝深化〟の作品である。まず、本作に参加したヴォーカリストを見てみよう。ザ・ウィークエンド、サム・スミス、グレゴリー・ポーター、ライオン・ベイブ、クワブス、ロード、ミゲル、ナオ、ジョーダン・ラケイ。すでにスターの地位を得ている者から、ここ最近注目を集める若手まで、豪華な顔ぶれだ。


 さらにサウンド。一聴して耳を引くのは、前作以上にR&Bの要素が色濃く出ていること。前作も、しっとりとした艶やかさが漂うサウンドで、さながらベテラン・アーティストのような作風だったが、本作はその老練さがより顕在化している。グレゴリー・ポーターが歌う3曲目「Holding On」以降は、Nervous(ナーバス)やEmotive(エモーティヴ)あたりを想起させる、いわゆるNYハウスのエッセンスを取りいれた軽快な曲もあるが、アルバム全体の作風は非常に落ちついており、踊らせるよりも聴かせる内容となっている。プロダクションも、ヴォーカルを強調したものが目立ち、〝歌〟を意識しているのは明らか。


 そんな本作、人によっては物足りなさを感じる作品だと思う。たとえば、前作の成功で得た勢いをそのままに、チャレンジングなアルバムを作るべきだったという意見。あるいは、ゲストに頼った保守的な作品だと思う者もいるだろう。しかし筆者は、本作を大歓迎したい。確かに、前作との明確な違いは見られず、目新しさもない。だが、どこまでもロマンティックで、最初の音が鳴り響いた瞬間、目の前の景色をガラリと変えてしまうポップ・ソングが詰まった本作は、不当な評価にさらされるべきではない。グッド・メロディーに、グッド・サウンド。言ってしまえば本作はそれだけだが、そのふたつだけで極上のポップ・ソング集を生みだせるという事実には、驚愕するばかりだ。


 そもそも、本作を高く評価できない者たちは、いまだ〝古い/新しい〟という時代錯誤な価値基準にとらわれているにすぎない。もはや、〝古い音楽〟など存在しないのだ。あるのは、自分がまだ聴いたことのない音楽だけ。このことに多くの人はもう気づいている。そして、その〝多くの人〟に、ディスクロージャーが含まれるのは言うまでもない。



(近藤真弥)

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