TOMO AKIKAWABAYA『The Invitation Of The Dead』(Minimal Wave)

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 嬉しいことに、筆者のレコード・コレクションは、多くの音楽愛好家から譲りうけたレコードによって、実に多彩なものとなっている。特に印象的なレコード・コレクションは、親戚のおじさまからいただいたコレクションだ。このおじさま、吉祥寺マイナーという、日本のアンダーグラウンド・シーンを語るうえで欠かせないライヴ・ハウスにも通っていたお方。当然、彼のレコード・コレクションも、日本のアンダーグラウンド・シーンに名を残すバンドの作品で埋めつくされていた。リビドー、ピンキー・ピクニック、サラスヴァティ、PTA's、黒色エレジー、幻覚マイム、ロシアバレエ団、ノン・バンドなどなど。8割くらいが70年代後半から80年代の間に作られた作品で、ポスト・パンクやニュー・ウェイヴと呼ばれる音が多かった。


 そのなかでも、とりわけよく聴いたのは、Tomo Akikawabaya(トモ・アキカワバヤ)の作品群だ。ほとんどの作品で、妖艶な雰囲気に包まれた女性をジャケットにフィーチャーしているのが面白かった。なんとなく、ロキシー・ミュージックの『Roxy Music』(1972)や『Siren』(1975)のアートワークに近いセンスを感じたからだ。とはいえ、グラマラスなブライアン・フェリーのヴォーカルと比べると、Tomo Akikawabayaの歌声はどこかぶっきらぼうだが。強いて類例をあげれば、初期のデイヴ・ガーン(デペッシュ・モード)である。また、起伏がほとんどない、淡々としたエレ・ポップなサウンドにも惹かれた。シンプルすぎる淡白なビートに、心地よい冷たさを帯びたシンセ、そのすべてが筆者の耳に馴染んでいった。隙間だらけのサウンドスケープ、そして不備が目立つプロダクションは、お世辞にも褒められたものではない。だが、そうした不完全さが妖気を漂わせるゴシックな作風に繋がっているのだから、興味深い。ジャンルで言えば、ポスト・パンク、ニュー・ウェイヴ、ミニマル・シンセということになるだろうか。


 このような興味深い体験をしたのは、いまからちょうど10年前のことだが、そんな過去の想い出を呼びおこすニュースが飛びこんできた。なんと、ここ数年カルト・ニュー・ウェイヴのリイシューで注目を集めているレーベルMinimal Wave(ミニマル・ウェイヴ)から、Tomo Akikawabayaの作品が再発されたのだ。これまでも、〝どこで見つけてきた?〟と言いたくなる作品をたくさんリイシューしてきたMinimal Waveだが、とうとう日本産の作品に手を伸ばしたというわけだ。レーベル主宰のヴェロニカ・ヴァシカ、筋金入りのディガーだなと、あらためて実感させられるニュースだった。


 このたび再発された『The Invitation Of The Dead』は、Tomo Akikawabayaが過去に発表したアルバム『The Castle』(1984)と、シングル「Anju」(1985)をコンパイルしたもの。サウンドは、先にも書いたとおり。正直、ネット上に〝正しいミックスのやり方〟みたいな情報が横溢し、誰もがそれなりのプロダクションを施せる現在においては、粗だらけに聞こえるはずだ。しかし、テクノロジーの発展により均質化される前のサウンドは、聴き手の感性を拡張する〝ナニカ〟であふれていると思う。実は、のちのV系とも接続できる云々...の話もしたいところだが、そうすると本題からかけ離れてしまうので、今回はこのくらいにしておこう。まずは、現在に蘇ったTomo Akikawabayaの音世界を楽しんでもらいたい。



(近藤真弥)

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