NEW ORDER『Music Complete』(Mute / Traffic)

| | トラックバック(0)
New Order『Music Complete』.jpg

 ニュー・オーダーが、前作『Waiting For The Sirens' Call』以来約10年ぶりとなるアルバムをリリースした。『Music Complete』と名づけられたそれは、ダニエル・ミラー主宰のMute(ミュート)移籍後、初のアルバムとしても話題になった。本作と前作における一番の違いは、ピーター・フックが脱退し、ジリアン・ギルバートが復帰したことだろう。2012年にリリースされたライヴ・アルバム、『Live At Bestival 2012』のレヴューでも書いたが、筆者はピーターがいないニュー・オーダーに対して、複雑な感情を抱いている。喧嘩別れのような形で脱退してしまったこと、そしてその傷痕は、いまだ両者にまざまざと刻まれていること。これらの事実がもたらす感傷は、10年ぶりにアルバムをリリースという嬉しいニュースが届いても、筆者の心から消え去ることはなかった。どうして運命は、バーナード・サムナー、ピーター・フック、スティーヴン・モリス、ジリアン・ギルバートの4人を揃えないのか? いくらなんでも、惨すぎるではないか...。


 本作を聴いて驚かされたのは、ギター・サウンドが著しく後退している点だ。全体的にエレクトロニック・サウンドが際立ち、ロック・アルバムというよりはダンス・ミュージック・アルバムと言える作風に仕上がっている。「Unlearn This Hatred」以外は、すべて5分以上あるのも興味深かった。3分どころか2分台のポップ・ソングも珍しくなくなった現在において、全11曲中10曲が5分以上という内容。言うなれば本作は、純粋なポップス・アルバムではない。過去のディスコグラフィーでいえば、『Technique』(1989)が一番近いのかもしれないが、筆者はニュー・オーダーの作品群ではなく、スティーヴン・モリスとジリアン・ギルバートによるジ・アザー・トゥー、それからバーナード・サムナーとジョニー・マーによるエレクトロニックのサウンドを想起した。ただ、トム・ローランズ(ケミカル・ブラザーズ)をプロデューサーに迎えた「Singularity」は、攻撃的でロックなニュー・オーダーを堪能できるものになっている。


 ゲスト陣も非常に豪華で、エリー・ジャクソン(ラ・ルー)、ブランドン・フラワーズ(ザ・キラーズ)、イギー・ポップなどが参加している。だが、筆者の目をもっとも引いたのは、「Nothing But A Fool」にバッキング・コーラスで参加しているデニース・ジョンソンだ。というのもデニース、プライマル・スクリームの大名曲「Don't Fight It, Feel It」(1991)でヴォーカルを務めたシンガーなのだ。細かすぎる着目と言われればその通りだが、先のトム・ローランズやエリー・ジャクソンも含め、本作はイギリスのポップ・ミュージック史に名を残す者たちが集まって作られたという意味でも、面白い作品だ。


 しかしそれゆえ、ピーターの不在がより目立ってしまうのも事実である。ニュー・オーダーに影響を受けたアーティストが何人も集まり、さらにイギー・ポップのような生きる伝説まで参加しているにも関わらず、ピーターがいないというのは、さすがに寂しい。正直に言ってしまえば、本作のニュー・オーダーは、ニュー・オーダーであってニュー・オーダーではない。たとえ原理主義的すぎると言われても、筆者はその確信を崩すことはない。バンドとは不思議なもので、このメンバーでなければ成立しない、あるい特別な魔法が生まれないというケースは多々ある。そのうちのひとつに、ニュー・オーダーも含まれるのは言うまでもない。



(近藤真弥)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: NEW ORDER『Music Complete』(Mute / Traffic)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/4143