ELYSIA CRAMPTON『American Drift』(Blueberry)

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 去年7月、フォルティーDLことドリュー・ラストマンインタヴューをする機会があった。そのときは実にさまざまな話をしたが、なかでもE+Eというアーティストの話で盛りあがったときのことは、今でも鮮明に覚えている。さらに、ドリューが主宰するレーベル、Blueberry(ブルーベリー)でE+Eと契約したいという裏話も聞き、ここまで音楽の嗜好が合うアーティストにはそう簡単に巡りあえないなと思ったものだ。このインタヴューから約1年後、E+Eがエリシア・クランプトン名義で素晴らしいレコードを発表してくれた。しかも、Blueberryから! ドリューはエリシアと無事契約できたというわけだ。本当に本当に、おめでとう。


 さて、そのレコードとは、『American Drift』と名づけられたアルバム。エリシアの音楽はサンプリングが基調にあり、ドリーミーで解放的なシンセ・サウンドを特徴としているが、それは本作にも引きつがれている。ひとつのサンプル・ネタを執拗に繰りかえし、その周りをさまざまな音が矢継ぎ早に飛び交うという手法も健在。それゆえ、これまでエリシアの音楽を熱心に追いかけてきた者からすれば、〝進化〟というより〝深化〟に聞こえるかもしれない。クドゥーロ、トラップ、アンビエントなど数多くの要素を細切れにして撹拌させた作風も、エリシアの十八番。それでも、本作をキッカケにエリシアの音に触れた者からすれば、〝衝撃〟になるはずだ。


 圧巻は、約10分に及ぶ「Wing」である。執拗に繰りかえされるアコースティック・ギターのサンプルを軸に、つぎつぎとSEが飛びだしてくる。そのSEを挟むタイミングがこれまた絶妙で、聴き手を陶酔に導くアグレッシヴなグルーヴを生みだす。それは言うなれば、恍惚と妖艶に満ちた愛しき激情。


 そして、『American Drift』というタイトルについても特筆しておきたい。このタイトル、日本語では〝アメリカの流れ〟と訳せるが、そうしたタイトルを掲げた作品で、銃の装填音や軍隊の掛け声にも聞こえるヴォイス・サンプリングを多用しているのは、どうにも意味深長だ。もちろん、筆者の考えすぎである可能性も否定できないが、本作は〝トランスジェンダーとして生きるエリシアから見たアメリカ〟という捉え方も可能だと思う。だからこそ本作は、キラキラとした高揚感を持ちながらも、同時にダークで殺伐とした空気が漂っているのではないか。と、筆者は解釈したが、あなたの心にはどう映っただろう?



(近藤真弥)

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