タイヨンダイ・ブラクストン

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TYONDAI BRAXTON

うーん...僕とフリー・ジャズの関係って
複雑なんだよね(笑)

去る、7月2日のリキッドルーム恵比寿。この日は、タイヨンダイ・ブラクストンのライヴがおこなわれた。オーケストラルな前作『Central Market』から一転、ミニマルなエレクトロニック・ミュージックを打ちだした『Hive1』のリリースに伴うライヴだけあって、一体どんなパフォーマンスになるのか? と筆者は楽しみにしていた。

結論から言うと、タイヨンダイは筆者の期待に応える、いや、期待以上のパフォーマンスを見せてくれた。緊張感をまとった先鋭的なサウンド、計算しつくされた綿密な音響空間、そのすべてが観客たちの固定観念を爽快になぎ倒していく。そのさまは観ていて清々しいほど。〝圧巻〟とは、あの日のことを言うのだろう。

といったところで、そろそろ本題、タイヨンダイのインタヴューにいきましょう。このインタヴューは、今回の来日中におこなったもの。なので、『Hive1』について訊きつつも、タイヨンダイのパーソナルな側面も引きだせたらと考えていた。それが上手くいっているかどうかの判断は読者のあなたに任せるとして、いま言ったような考えでインタヴューしたおかげか、『ツイン・ピークス』やフリー・ジャズに関することなど、いくつか興味深い話を聞くことができた。ではでは、どうぞ。

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photo by Masanori Naruse


昨日は大阪でライヴをして、今日はいよいよ東京ですが、その前にもいくつかライヴをおこなってますよね。そのなかで興味深い反応や意見などはありましたか?

タイヨンダイ・ブラクストン(以下T):ここにくるまでに、カナダとアメリカでショーをしたんだけど、そのなかでもニュー・ヨークとモントリオールのショーは特別だった。ハイヴ(Hive)・プロジェクトのパフォーマンス用に作られた木製のポッドがあって、それを使うことができたからね。

そのハイヴ・プロジェクトって、もともとは美術館などで披露するインスタレーションですよね。

T:始まりがそうだったというのはあるけど、いまはそれをどうレコードに移していくか? ということを考えているから、当初の表現とは違うものになってきている。

そうしたインスタレーションを『Hive1』というレコードに落としこむ際の難しさってありました?

T:そうだね。環境を表現した音楽になるから、できるだけ大音量で聴いてほしいという意図があって、それをレコードに落としこむのが一番大変だったかな。だから、『Hive1』は大音量で聴いてほしいということはいろんなところで言ってる。でもそれ以外は、スムースに進んだよ。

いま大音量という言葉がでましたけど、僕は以前、クラブのサウンドシステムで『Hive1』を大音量で聴いたんですが、そのときに「クラブのサウンドシステムとの親和性があるのかな?」って思いました。『Hive1』を作るにあたって、クラブのサウンドシステムにインスパイアされましたか?

T:うん。僕はエレクトロニック・ミュージックが大好きだし、そういうところからも影響を受けていると思う。サウンド・デザインにも興味があるしね。

影響を受けたアーティストって具体的に誰ですか?

T:ブルックリンのブラック・ダイス、それからオウテカかな。あとはフランスのエドガー・ヴァレーズ。

ミュージック・コンクレートは?

T:うん(笑)。ピエール・シェフェールは好き。

あと、スティーヴ・ライヒに通じるミニマル・ミュージックの要素もあるなと感じました。

T:イエス。スティーヴ・ライヒをはじめとするアメリカのミニマリストには、すごく影響を受けていると思う。

アメリカのミニマリストのどこに魅力を感じるんですか?

T:彼らの魅力は、ひとつのアイディアからいろんな要素を削ぎ落としていって、クリアなサウンドを作っているところ。そういうところにパワフルさを感じる。でも僕は、いろんな音が入ってる複雑でマキシマムなサウンドも好きなんだ。だから、そのふたつをバランスよく表現することを心がけている。そうすることで、いろんな側面を持ったサウンドが生まれるからね。

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photo by Dusdin Condren

削ぎ落とすといえば、『Hive1』は前作『Central Market』にあったオーケストラルな側面が少なくなりましたよね。音数も減りましたし。

T:確かにね。でも、『Hive1』のパーカッションは、オーケストラでやっているように、僕が楽譜を書いて作ったものだよ。そうやって書いたものと、モジュラー・シンセで作った音を混ぜあわせるのが、『Hive1』でやりたかったことなんだ。そうすることで、いろんな音がどんどん抽象化して、ディープなものになると思ったから。そうやってミックスされたものがどんな表現になるのかを学びたかったというのもあるけど。

『Hive1』に収められた曲のなかでは、〝声〟が使われている曲もありますよね。

T:『Hive1』で〝声〟が使われてるのは2曲しかないんだけど、あくまでサンプルとして声を使うことで、人が慣れ親しんでいないようなナニカをあたえたかったというのはある。

実を言うと、いま〝声〟について訊いたのは、その使い方にワンオートリックス・ポイント・ネヴァーホリー・ハーンドンといった、最近注目されているアーティストと共振するものを感じたからなんです。

T:いま名前が挙がったふたりは素晴らしいアーティストだと思う。でも、ホリー・ハーンドンなんかはもっと声を前面に出しているよね。声を強調すると、自然と耳が声に引きつけられてしまうと思うんだけど、僕はそうじゃなくて、他の音と分け隔てなく、フラットに声を扱っている。

なるほど。あと、『Hive1』を初めて聴いたとき、ひとつひとつの音は無軌道なのに、それが曲としてまとまると整合性が生まれるという不思議な感覚を得たんです。そのとき僕は、「なんだかフリー・ジャズみたいで面白いなあ」と感じたんですが、フリー・ジャズって聴きます?

T:うーん...僕とフリー・ジャズの関係って複雑なんだよね(笑)。なぜかというと、僕にとってフリー・ジャズは、繋がりを感じるのが難しい音楽だから。僕は、しっかり組みたてられたフォームを持つ音楽が好きなんだけど、同時に人間だけでは作りえない音楽も好き。エレクトロニック・ミュージックが好きなのも、人間だけでは作りえない音楽ができるからなんだよね。そして僕は、そのふたつを合わせた音楽をしているつもり。フリー・ジャズってだいたい即興でしょ? でもフリー・ジャズは、形にとらわれずにやらなきゃということにこだわりすぎていると感じるし、そういった意味では型にハマっているとも言える。そうすると、もともとあるものが完全に崩れてしまうということが起こると思うんだけど、そういうところがあるから、僕はフリー・ジャズを好きになれない。でも同時に、フリー・ジャズから生まれるスピリチュアルなものには敬意を払っている。だから複雑な関係なんだよ(笑)。

なんだか腐れ縁のカップルみたいですね。ちなみに、東京のライヴでは宇川直宏さんがVJで参加しますけど、そういうミュージシャン以外でインスパイアを受けた人っていますか?

T:デヴィッド・リンチは大ファンだし、それからジム・ジャームッシュ。映画大好きだから。

デヴィッド・リンチといえば、あなたが『ツイン・ピークス』大好きだと発言したインタヴューを見たことあるんですが...。

T:うん、大好きだよ(笑)。

あなたから見て、『ツイン・ピークス』の面白さってどこですか?

T:すごくパーソナリティーがある作品だと思う。ディープで美学も感じられる。面白くもあり、奇妙でもあり、怖くもあり...。映像も美しいし、それらが上手く合わさってるのが良いよね。

僕は『ツイン・ピークス』の登場人物だと、カイル・マクラクラン演じるデイル・クーパーが好きなんですが、あなたは?

T:クーパーは良いよね。あと、デヴィッド・リンチが演じているゴードン・コールも好き(笑)。

ハハハ(笑)。そういえば、『ツイン・ピークス』の新シーズンでデヴィッド・リンチが脚本から降りるという話もありましたよね。いまは復帰しましたけど。

T:降りるというニュースを聞いたときは、傷ついたよ(笑)。


2015年8月
取材(2015年7月)、文/近藤真弥



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タイヨンダイ・ブラクストン
『Hive1』
(2015)

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