KEITA SANO『Holding New Cards』(1080p)

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 〝いま、もっとも面白い音を鳴らしている人は誰?〟と訊かれたら、まっさきに名が挙がるうちのひとり。それがKeita Sano(ケイタ・サノ)だ。


 Keita Sanoは、岡山を拠点にするトラック・メイカー。彼のことを知ったキッカケは、ブルックリンのMister Saturday Night(ミスター・サタデー・ナイト)からリリースされた3曲入りシングル、「People Are Changing」(2014)。粗々しい質感の音が紡ぎあげる、中毒性が高い心地よいグルーヴは非常に興味深いものだった。3曲ともビートはシンプルな4つ打ちだが、ひとつひとつの音に遊び心がたっぷり込められているおかげで、繰りかえし聴きたくなってしまう。そうした「People Are Changing」の面白さは、ホーム・リスニングだけでなく、ミラーボール煌めくダンスフロアでも抜群の効果を発揮する。そう考えると「People Are Changing」は、ダンスフロアとベッド・ルームをまたぐ秀逸な折衷性と順応性が光る作品とも言える。


 このような「People Are Changing」の素晴らしさは、Keita Sanoの魅力そのものだ。それは、セカンド・アルバムとなる『Holding New Cards』を聴いてもわかるはず。本作はハウス・ミュージックを基調にしており、この点は「People Are Changing」とも類似するが、音の使い方はこれまで以上に豪快で面白い。


 まず、1曲目の「Fake Blood」。どこか郷愁を抱かせるシンセが印象的なこの曲は、音が縦横無尽に飛びまわる。音楽用語でいうところのパンニングが本当に面白い。リスナーを本作の音世界にいざなう極上の招待状としては十分すぎるほどの驚きで満ちている。


 また、2曲目の「Onion Siice」は、ハウス・ミュージックが多い本作のなかでは異彩を放つジャングルに仕上がっている。最初は音数が少ない淡々とした曲調だが、2分30秒以降は次々と音が交わり、トランシーな雰囲気をまとっていくという展開がなんともたまらない。そして、4曲目の「Everybody Does It」は、Keita Sano流のベース・ミュージックとも言える曲で、音が大きくなったり小さくなったりするという大胆な内容。この曲も筆者のお気に入りだ。


 それから、ムーディーマンを彷彿させるヴォイス・サンプルの使い方が印象的な「Search」、ミスター・フィンガーズの肉感的かつ艶やかなトラックに通じる「Happiness」、ハンドクラップとリムショットにTB-303風のサウンドというもろアシッド・ハウスな「Escape To Bronx」の3曲も、特筆に値する出来だ。3曲ともハウス・ミュージックで、そういった意味ではこれまでのKeita Sanoにもっとも近い3曲だと言える。



(近藤真弥)



【編集部注】『Holding New Cards』は、カセットとデジタルのみです。共に1080pのバンドキャンプで購入できます。

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