OGRE YOU ASSHOLE『Workshop』(P-Vine)

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 『Homely』(2011)、『100年後』(2012)、『ペーパークラフト』(2014)と、ここ最近のOGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール。以下 : オウガ)のアルバムは、聴き手の想像力に訴求するコンセプチュアルな姿勢を強く打ちだしていた。その姿勢は、筆者からすると現実世界と深い繋がりを感じさせるもので、特に『ペーパークラフト』収録の「見えないルール」などは、支配されているという自覚を抱かせないまま社会にとって都合の良い行動をするよう仕向ける、いわゆる〝環境管理型権力〟に侵食されつつある世情の不気味さを表現していた。こうした現実世界に対する批評性は、『Homely』以降のオウガを理解するうえでは見逃せない側面であり、筆者を含めた多くの受け手も、その側面を重点的に語ってきたと思う。


 しかし、オウガにとって初のライヴ・アルバムとなる本作『Workshop』は、その側面にばかり注目しすぎたのでは? と受け手に自問させる作品だ。アルバムでは、受け手の深読みをいざなうコンセプトや言葉で武装するオウガだが、ライヴになると、音の気持ちよさを追求する快楽主義的な側面も顔を覗かせる。プログレッシヴ・ロック、ファンク、クラウトロック、AOR、ニューエイジ、アンビエント、ポスト・パンクなどなど、多くの要素が溶解したサウンドスケープは、受け手をグッド・トリップに導く恍惚感で満たされている。それはさながら、音楽による宇宙旅行だ。


 とはいえ、そんな宇宙旅行を見せてくれる本作は、とある一夜のライヴ演奏を収録しただけの作品ではない。というのも本作、ライヴ演奏の音源を下地にしながらも、スタジオでのポスト・プロダクションを経て完成に至った作品なのだ。言うなれば、ライヴというその場限りの固有性と、〝アルバム〟という形あるものだからこそ込められる、時代や場所を越えて人と人を繋げる超越性が共生している。ゆえに本作は、過去や現在という時間軸から解き放たれた、とても不思議な聴感覚をもたらしてくれる。それこそ、ここではないどこかへ連れだしてくれるナニカ....と言えれば楽なのだが、それは単純な逃避願望でもなさそうで、だからこそ本作を何度も聴いて、あーでもないこーでもないといろいろ考えてしまう。そうした思考のなかでハッキリしたのは、〝すごく気持ち良い音!〟ということだけ。まあ、本作に限って言えば、それだけで十分なのかもしれないが。


 音といえば、本作を聴いて強く思ったことがある。それは、出戸学(ヴォーカル/ギター)は素晴らしいヴォーカリストだということ。お世辞にも、〝技術的に巧いヴォーカリスト〟とは言えない。だが、曲ごとに適切な歌い方を把握し、それを歌声としてアウトブットできるという意味では〝上手いヴォーカリスト〟だと言える。他にこのような特徴を持つ者といえば、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーになるだろうか。バーナード・サムナーも技術的に巧いヴォーカリストではないが、曲に自分の歌声を適応させるのが抜群に上手い。それゆえ、さまざまな音が鳴るなかでも強い存在感を発揮し、聴き手に強く印象づける支配力がある。そのせいで、ザ・ケミカル・ブラザーズ「Out Of Control」や、808ステイト「Spanish Heart」など、バーナード・サムナーがヴォーカルで参加した曲のほとんどは〝ニュー・オーダーの曲〟に聞こえてしまうのだが、こうした強烈な支配力が出戸学の歌声にもある。どんな曲であっても、出戸学が歌えばそれは〝オウガの曲〟になる。そんな強みを持っていたからこそ、オウガは着実に進化しながら、活動10周年を迎えることができたのだと思う。



(近藤真弥)

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