NOCTURNAL SUNSHINE『Nocturnal Sunshine』(I/AM/ME)

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 2008年にデビュー・シングル「Sick Panda」をリリースしたマヤ・ジェーン・コールズ。彼女がダンス・ミュージック・シーンで大きく飛躍しはじめたのは、「No Sinpathy」というフロア・ヒットを飛ばした2012年ごろだったか。これ以降の彼女は、初のフルレングス・アルバム『Comfort』(2013)を発表し、ロンドンの有名クラブFabric(ファブリック)のDJミックス・シリーズ『Fabric』にも登場するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。オリジナル作品では、音の抜き差しが絶妙な渋いディープ・ハウスを展開しているが、そうした抜き差しの巧さはDJプレイも同様。フロアの雰囲気を瞬時に把握し、繊細なEQ操作で音を変化させていく。そのおかげで、〝いつ曲が切り替わった!〟と驚くこともしばしば。セオ・パリッシュのようなラフで激情的なプレイも大好きだが(実際、セオがエレクトラグライド2013で披露してくれたDJプレイを浴びながら、筆者は泣いてしまった)、知性的かつ抑制的な彼女のDJプレイも、心を躍らせてくれる。そんな彼女のプレイが生みだす程よい昂揚感をまとったグルーヴは、クール・アンド・ビューティフル。凛とした鋭いカッコよさがある。


 その凛とした鋭いカッコよさは、彼女がノクターナル・サンシャイン名義で発表したアルバム『Nocturnal Sunshine』でも健在。とはいえ本作は、彼女お得意のディープ・ハウスではなく、ダブステップを基調にした音楽性が特徴だ。しかも面白いことに、2000年代半ばごろのダブステップ。具体的に例を挙げると、ダブステップという言葉が出回りはじめたころに発表されたコンピレーション『Grime 2』(2004)、ダブステップをメインストリームに引きあげたグループ、マグネティック・マンの一員でもあるベンガの『Diary Of An Afro Warrior』(2008)、デトロイト・テクノとベーシック・チャンネルをダブステップに接続してみせた、2562『Aerial』(2008)といったあたりの音。このように本作は、これまでダブステップ(そしてベース・ミュージック)を熱心に追いつづけてきた者からすると、懐かしみを抱かせる内容だ。


 また、もともとダークでひんやりとした質感が目立つサウンドを特徴とする彼女だが、この側面がノクターナル・サンシャイン名義ではより強調されていることも特筆しておきたい。だが、そのダークさは重苦しいものではなく、毒々しさは薄い。ゆえに本作は聴きやすさがあり、多様化が進む現在のベース・ミュージックにいざなう招待状として、あなたに届くはずだ。


(近藤真弥)




【編集部注】『Nocturnal Sunshine』の国内盤は、7月22日にHostessから発売予定です。

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