HUDSON MOHAWKE『Lantern』(Warp / Beat)

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 ハドソン・モホークは、音楽を〝古い/新しい〟という二項対立から解放してみせた。それは、彼のデビュー・アルバム『Butter』(2009)を聴けばわかるはずだ。このアルバムで彼は、ヒップホップを基調に、プリンスに通じるセクシーなファンク、サイボトロンを代表とする80年代エレクトロなど、さまざまな音楽を血肉としたうえで、〝ハドソン・モホークのグルーヴ〟を生みだした。ただ過去の音楽を焼きなおしただけでもなく、最先端とされる音楽をなぞっただけでもない、まさに唯一無二のポップ・ミュージックが『Butter』にはたくさん収められていた。ゆえにこのアルバムは、いつ聴いても古びた印象とは無縁である。そんな『Butter』は、面白いポップ・ミュージックを作ろうと試みる者たちにとって、重要なヒントでありつづける。


 そのような作品を残した彼が完成させたセカンド・アルバム、それが本作『Lantern』だ。結論から言うと本作は、『Butter』を優に超える傑作であり、2010年代を代表する1枚だということ。やってることは、『Butter』の頃と比べてもたいして変わっていない。相も変わらず、音楽を〝古い/新しい〟という概念で捉えることなく、あらゆる音楽を自由奔放に血肉としている。


 では、本作のどこが『Butter』を優に超えているかというと、先に書いた自由奔放さが深化している点につきる。『Butter』をリリース以降、ルニスと結成したユニットTNGHT(トゥナイト)、さらにはカニエ・ウェスト主宰のGOOD Music(グッド・ミュージック)とプロデューサー契約を果たし、ドレイク、カニエ・ウェスト、プッシャーTといったアーティストのプロデュース業など、多岐にわたる活動を経ているからか、本作には壮大なスケールがある。この点は前作になかったもので、こうなったのはおそらく、本作に至るまでの活動で得た自信とスキルをすべてつぎ込んだからだと思う。その結果として、RLグライムを連想させるド派手なトラップの要素が色濃く表れている。


 こうした側面は、いわゆる〝売れ線〟と揶揄されるのかもしれない。だが、それのどこか悪いというのか? むしろ、『Butter』で見せてくれた自由奔放さと捻りが効いたビートの刻み方を貫きつつ、大型フェスでも堂々と鳴り響くトラックを作りあげたことに、盛大な拍手を送るべきだろう。少なくとも、〝アンダーグラウンド〟だの〝インディー〟だのというレッテルを言い訳にした粗悪な音楽よりは数段マシだ。それに、ゲストのアントニー・ヘガティーやミゲルといった異才をひとつのアルバムに溶けこませるセンスや、ベッドルームでひとり音楽に浸る者も惹きつけられるメロディアスな側面も健在なのだ。つまりハドソン・モホークは、元来の魅力を深化させつつ、その深化した魅力をより多くの人に届けるための進化も実現させたということ。


 そうした本作は、ハドソン・モホークがあらためて、不可能だと思われがちな〝広く深く〟は可能であると証明した傑作として、色褪せることのない輝きを放ちつづけるだろう。



(近藤真弥)

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