フロリダ「FLORIDA」(Omedai Records)

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 元BiS(ビス)のテンテンコと滝沢朋恵によるユニット、フロリダ。彼女たちのことを知ったのは、去年11月に桜台POOLで開催されたイヴェント、Tokyo Zinester Gathering 2014(トーキョー・ジンスタ・ギャザリング)にて。このイヴェントに出演したときの彼女たちは、全身黒ずくめという出でたちで、どこかゴシックな雰囲気を漂わせており、同時に得たいの知れない不気味なオーラをまとっていた。しかし音のほうは、誘眠性が高いトリッピーなもので、そこまでダークな印象を受けなかった。ジャンルでいえばインダストリアルやミニマル・シンセということになるのだろうが、色でいえば〝黒〟よりも〝白〟を連想させる音像は、キャッチーですらあった。こうしたヴィジュアルとサウンドのギャップに魅せられた筆者は、「これまた面白いユニットに出逢ってしまった」と、心躍らせた。


 そんな彼女たちによるファースト・ミニ・アルバムが、本作「FLORIDA」である。動物園でフィールド・レコーディングした音も使用して作られた本作は、端的にいえばポスト・パンクだ。聴き手を酩酊にいざなう反復ビート、シンプルでドライなシンセ・サウンド、そこにポエトリー・リーディングに近いヴォーカルが乗るというスタイルは、スロッビング・グリッスルを想起させる。とはいえ、『Chill Out』(1990)期のKLFに通じる静謐でたおやかなシンセ・サウンドが映える「DOLINE」などは、やはり〝黒〟というより〝白〟をイメージしてしまう(そういえば、KLFは1991年に『The White Room』というアルバムを出していたか...)。


 また、彼女たちが意図したのかは不明だが、本作のサウンドは、ヘレナ・ハウフやブランク・マスなどに代表される、ここ1~2年で盛んになってきたEBM再解釈の潮流と共振するものだ(ブランク・マスはニュー・ビートの要素も強いが)。それこそ、Modern Love(モダン・ラヴ)やBlackest Ever Black(ブラッケスト・エヴァー・ブラック)が中心となったインダストリアル再評価のブーム以降といえる音。


 ただ、今いくつか挙げた例と彼女たちでは、明らかに異なる点がある。それは、彼女たちのサウンドがキュートだということ。こうした側面は、彼女たちの可愛らしい声質によってもたらされたものだと思うが、この可愛らしい声質に、やりたい放題の歪でディープなサウンドが交わると、キャッチーなポップ・ソングになってしまうという魔法が発動するのだからなんとも摩訶不思議。この魔法が、本作を魅力的な作品にしているのは間違いない。




(近藤真弥)

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