白痴「チンドンDINGDONG! ~みのくるいマーチ~」(Call And Response)

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 障害を指す用語は、公共電波において自主規制されることがある。重度の知的障害を指す白痴もその対象だが、大胆にもそれをバンド名に掲げる佐賀出身の3人組がいる。白痴は、女性ドラマー村里杏、ギターのはらひろ、ベースのまるの全員が交互にヴォーカルをとり、学校の終業を告げるチャイムの音をはじめとしたおもちゃのようなエフェクトと、誰もが知る童謡や70年代の歌謡曲のメロディーをごちゃまぜにぶちこんだジャンク・ポップを展開する。あふりらんぽやDODDODO(ドッドド)、Limited express(has gone?)(リミテッド・エクスプレス・ハズ・ゴーン)といった、関西ゼロ世代やその周辺と共振する感性だ。


 そんな白痴が、ファースト・ミニ・アルバムにあたる本作「チンドンDINGDONG! ~みのくるいマーチ~」を発表した。同じ九州出身のMO'SOME TONEBENDER(モーサム・トーンベンダー)「未来は今」を連想させるベース・リフからはじまる3曲目「食欲」、キャンディーズ「春一番」のパンク・オマージュのような「ウグイス」と続き、運動会の行進曲としても有名な「ボギー大佐」の替え歌の一節、〈サル、ゴリラ、チンパンジー〉を村里杏が元気よく叫んではじまる「人間」は、世に流通するパンク・ソングの大半は先人の猿真似に過ぎないと断言するかのようだ。他にも、ジャズのような展開からハード・ロックへなだれこみ、最後は水の流れる効果音で締める「おもらし」など、奇々怪々な曲が並ぶ。Number girl(ナンバーガール)を好むバンドマンからBABYMETAL(ベビーメタル)のファンまで、幅広い層にアピールするかもしれない。


 ところで私は、ドラマー村里杏のソロ・ライヴを観たことがある。その日の彼女はドラムではなく、キーボードとサンプラーを駆使して歌い踊っていた。特に印象的だったのは、曲間の語りで彼女が「神様、願い事がもし叶うなら、私はサファリパークに行きたい!」と唐突に叫んだことだ。深い意味はないアドリブだったのかもしれないが、前後の発言の文脈から、「馴染めないこの社会を捨てて荒野を目指そう」という意思表示に聞こえてしまった。こういった先が読めないパフォーマンスは、戸川純らによるゲルニカや、最近フランツ・フェルディナンドとFFS名義で共作したアメリカのバンド、スパークスなどを想起させた。


 そのスパークスに影響を受けたというクイーンのフレディ・マーキュリーは、ペルシャ系インド人の血を引き、当時イギリス領であったザンジバルから戦火を逃れイングランドに移り住んだ過去を持つ。白人のコミュニティーからも黒人のコミュニティーからも疎外され、帰属する場所がないために、彼は伝統的なオペラの定型を破壊した「Bohemian Rhapsody」を作ったのかもしれない。


 私は、白痴の音楽からも共通する精神性を感じる。古今東西の歌の形式を破壊し再構築した本作は、彼らなりの〝流れ者の狂詩曲〟なのだろう。



(森豊和)

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