DOMMENGANG『Everybody's Boogie』(Thrill Jockey)

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 ジム・オルークの新作を聴いて、おや? と思った。「That Weekend」のコーラスはザ・ローリング・ストーンズの「(I Can't Get No) Satisfaction」を、「End Of The Road」はクイーン「Don't Stop Me Now」をそれぞれ連想させるし、ラストの「All Your Love」は「Hey Jude」を思わせるアウトロという具合に、随所で60~70年代に対するノスタルジーを感じさせるのだ。彼は最近のインタビューで「70年代は私のルーツですから」(※1)と語り、たとえばレッド・ツェッペリンでは「Achilles Last Stand」をフェイヴァリットに挙げていた(※2)。そこでその曲を何度も聴きかえしてみたが、カラッとしたグルーヴ感と途方もない疾走感にあらためて驚かされた。当然だが、いつの時代も良いものは良い。


 そんなことを考えていた矢先に、ブルックリンの3人組ドンメンギャングに出会った。闇夜のアパートに赤いアメ車が一台というシンプルなカヴァー・アートがまず気になり、レッド・ツェッペリンばりに轟くギター・リフとディープ・パープルのように疾走するドラミングに度肝を抜かれた。アークティック・モンキーズがブラック・サバス的なリフとヒップホップの感性を取り入れたみたい器用なものではなく、もっと泥臭くブルージー、おまけに直球。だが、音像はスッキリしていて聴きやすい。


 1曲目「Everybody's Boogie」はファズの効いたギターにエコーなどの空間系エフェクトが重ねられ、ブーメランの軌道、あるいは暗闇を飛び交うコウモリの羽ばたきを思わせる音から始まる。遅れてトライバルなリズム隊が加わり、曲の半ばを過ぎて叫びだすヴォーカルは、まるで狼の咆哮だ。次の「Hats Off To Magic」は、ギターのリヴァ―ブが宙を切り裂く刃をイメージさせるというような映像が浮かぶサウンドで満たされる。その一方で、インタールードな小曲を挟みしわがれた声で歌われる「Her Blues」ときたら、録音状態が悪ければはるか昔の音源だと思ってしまいそうだ。ラストの「Lost My Way」で、ゆったりとした呪術的な演奏がしだいにフェイド・アウトしていくまで、全編通して良い意味で時代錯誤というか、昨今のブルックリン・シーンからの影響を微塵も感じさせない。しかもそれはあえて狙ったというより、これがやりたくて仕方ない! という印象だ。


 そんな彼ら、結成はブルックリンだが、メンバーはそれぞれアラスカ、ヴァージニア、オレゴンで個別に経験を積んできたという。いつだって中心から外れた場所にいる輩が新しい風を吹かせる。それがシーンの活性化を招くカンフル剤になるのか、病魔を呼び込む不吉な予兆なのかは分からない。ただひとつはっきりしているのは、彼らの放つエレクトリック・ブギーが私の胸を躍らせて仕方がないということだ。



(森豊和)



※1 : 『別冊ele-king ジム・オルーク完全読本 ~All About Jim O'Rourke~』(Pヴァイン)96ページより。


※2 : 『別冊ele-king ジム・オルーク完全読本 ~All About Jim O'Rourke~』(Pヴァイン)59ページ「ジム・オルークが選ぶ私の10曲」より。



【編集部注】『Everybody's Boogie』の日本盤はM/A/G/N/I/P/Hから6月24日発売予定です。

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