ALABAMA SHAKES『Sound & Color』(ATO / Hostess)

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 最初に言っておくと、ストロークスとアラバマ・シェイクスの音楽に対して、〝過去の音楽を焼きなおしただけの古いサウンド〟みたいなことを言うのは、さすがにお門違いだと思います。


 まずはストロークスから述べていきますと、1999年に結成された彼らは、2000年代初頭に勃興したガレージ・ロック・リヴァイヴァルの旗手として注目されました。しかし、ストロークスの音楽は、ガレージ・ロックの一言で括れるほど単純ではありません。ガレージ・ロック・リヴァイヴァルを代表する作品とされている、彼らのファースト・アルバム『Is This It』にしても、8曲目「Hard To Explain」のマシーナリーなビートは、80年代のニュー・ウェイヴを彷彿させるものです。


 彼らは4枚目のアルバム『Angles』で、そのニュー・ウェイヴの要素をより色濃く表現しましたが、こうしたサウンドは、ストロークスをガレージ・ロック・リヴァイヴァルという狭い枠組みで見ていた人からすれば、〝大変化作〟に聞こえるでしょう。ですが、そうしたくびきから解放された自由な感性を持っている人たちからすると、なんともストロークスらしい極めて自然体な作品に聞こえたはずです。〝これ、もともとストロークスにあった要素だよね?〟といった具合に。つまりストロークスは、ガレージ・ロックだけでなく、実にさまざまな音楽的要素を孕んだ折衷的バンドであり、だからこそ彼らは、あらゆる音楽がフラットに聴かれはじめた2000年代に、強い説得力を伴いながら「The Modern Age」という曲を鳴らすことができたのです。そんなストロークスが、〝古くさいバンド〟であるはずがないでしょ?(少なくともデビュー当時は)。むしろすごく現代的で、同時代性をまとった存在だと言えます。


 さてさて、ここでようやくアラバマ・シェイクスのご登場。2012年にデビュー・アルバム『Boys & Girls』を発表した彼ら彼女らも、昔懐かしいレトロ・サウンドと評されることが多い。確かに、ブリタニー・ハワードの強烈で迫力に満ちた歌声はジャニス・ジョップリンを想起させるし、聴き手の郷愁を誘発する味わい深さもある。だから、レトロなサウンドと言いたくなる気持ちもわからなくはない。


 でも、そうした見方は、コナー・オバーストやスカイ・フェレイラとの仕事で知られるブレイク・ミルズを共同プロデューサーに迎え作られた『Sound & Color』によって、徐々に減っていきそうな気がします。本作のサウンドスケープは、ひとつひとつの音が丹念に磨きぬかれていて、すごくモダンなものに仕上がっているからです。


 それに、ファンク、R&B、パンク、ゴスペル、さらにはサイケ・ロックなど、多くの要素を見いだせる音楽性も面白い。くわえて、その要素が曲単位で展開されるのではなく、ひとつひとつの音に込められているのだからすごい。たとえば、ギターはパンキッシュなのに、ドラムはファンクの影響を匂わせるといったような...。この点は、ストロークスのデビューから10年以上経った〝2010年代の折衷性〟と言える深化であり、もっと言えば、先述した「あらゆる音楽がフラットに聴かれはじめた2000年代」以降の感性が行き着いた、理想形のひとつなのかもしれない。


 とはいえ、この形そのものは、ダフト・パンク『Random Access Memories』、FKAツイッグス『LP1』、シャミール『Ratchet』などでも見られるものなんですけどね。ただ、この3者が見ている風景と類似したナニカを、アラバマ・シェイクスも視野に入れつつあるというのがなんとも興味深いと思うのです。



(近藤真弥)

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