HELSINKI LAMBDA CLUB「Olutta」(UK.PROJECT)

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Helsinki Lambda Club「Olutta」.jpg

 今年で5年目に入るライター活動のなかで、たくさんのアーティストにインタヴューをさせてもらった。この経験をもとにひとつ言えるのが、自分のサウンドに誇りがある人ほど、影響源となったアーティストやバンドの名を饒舌に挙げてくれるということ。おそらく、挙げたアーティストやバンドと比べられたとしても、自分のサウンドに宿る独自性が薄れることはないという自信があるからだろう。この自信は言ってみれば、自分のサウンドを楽しむための参考にしてもらえたらという余裕と、これまで聴いてきた音楽に対する愛と敬意が入りまじったものだと思う。


 そうした自信を感じさせてくれるのが、「Olutta」という作品だ。本作を作りあげたのは、2013年に千葉で結成されたバンド、Helsinki Lambda Club(ヘルシンキ・ラムダ・クラブ)。メンバーは橋本薫(ヴォーカル/ギター)、佐久間公平(ギター)、稲葉航大(ベース)、アベヨウスケ(ドラム)の計4人。本作は彼らの1stミニ・アルバムにあたり(去年も自主制作で「メシ喰わせろ」というミニ・アルバムを発表しているが、こちらはどういう位置づけなのだろう?)、これまでに「メッカで朝食を」「供養e.p.」「ヘルシンキラムダクラブのお通し」という3枚のシングルを残している。


 そんな彼らの歌は、音楽に対する愛情で満ちあふれている。曲名からして、「All My Loving」「Lost In The Supermarket」「テラー・トワイライト」など、ポップ・ミュージック好きならニヤリとしてしまうものが多い。「ユアンと踊れ」の歌詞にいたっては、ジョン・レノン、ジム・モリソン、ブライアン・ジョーンズ、AC/DCといった音楽史に名を残す者たちのみならず、小説家のジャック・ケルアックや、シャーロット・ブロンテの小説『ジェーン・エア』まで飛びだしてくる、いわば引用の嵐。それでも、憎たらしい知識自慢に聞こえないのは、橋本薫のどこか客観的な歌声と言葉選びが秀逸だから。これはおそらく、心地よい言葉のリズムを損なわないよう少なからず意識してるからだと思う。他の歌詞にも、思わずニヤけてしまう一節がたくさんあるので、あなた自身の耳をフル活用して探してみてほしい。


 もちろん音のほうも興味深い。シンプルでキャッチーなメロディーが際立ちながらも、グルーヴは多種多様。ストロークスを想起させるガレージ・ロックが土台にありながらも、〝テンション・コードが好きなんだろう〟と思わせる佐久間公平のギター・ワークはどこかジャズの匂いを漂わせるし、稲葉航大のベースはファンクやR&Bからの影響を匂わせる。このようなロック一辺倒ではない混ざり具合が、あらゆる音楽が並列で聴かれるようになった2000年代以降のセンスを感じさせるし、この点が「ストロークスを想起させる」と書いた所以でもある。つまり、過去の偉大な音楽を継承しつつも、それだけに依拠しないモダンな感性も持ちあわせているということ。


 また、歌詞ではヒネくれた視点を垣間見ることもできるが、自身の好きな音楽的要素を衒いもなく出してしまえるあたりは、とても素直だと言える。少なくとも、ニルヴァーナや初期のレディオヘッドに代表される、90年代のロックに多く見られた〝アンチ・メジャー〟みたいな否定的姿勢は見られない。いわば、〝好きなものは好き〟と言える自由さ。それがHelsinki Lambda Clubの魅力だと思う。その魅力をより深化させるためにも、音色などのアレンジをもう少し多彩にしたらいいかも?なんて思いつつ、筆者は「Olutta」を繰りかえし聴いている。



(近藤真弥)

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