DREW LUSTMAN『The Crystal Cowboy』(Planet Mu)

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 フォルティDLことドリュー・ラストマンは、時代の空気に敏感な男だ。たとえば、フォルティDL名義の最新作にあたる『In The Wild』(2014)では、μ-Ziq(ミュージック)や初期のエイフェックス・ツインに通じるIDMを基調にしつつ、このアルバムのリリース当時盛り上がっていたジャングル・リヴァイヴァルと共振する「Heart & Soul」、さらにはジュークの要素を匂わせる「Frontin」など、旬なものも貪欲に取りいれていた。いわばフォルティDLとしてのドリューは、トレンド・セッターと言える立ち位置で、さまざまな音楽的要素を上手く交雑させてきた。


 そんなドリューが、ドリュー・ラストマン名義では初のアルバムとなる本作『The Crystal Cowboy』を発表した。フォルティDLを名乗る際のドリューは、『In The Wild』リリースに伴い現代芸術家のクリス・シェンとコラボレーションするなど、明確なコンセプトをアルバムに込めることが多かった。しかし本作は、本名名義ということもあってか、リラックスした雰囲気が漂っている。何かしらのコンセプトや流行にとらわれていない、手グセに任せて作った曲を詰めこんだ印象だ。


 そうして詰めこまれた曲群は、アグレッシヴで速いBPMのものがほとんど。また、表題曲はゴールディーを彷彿させるジャングル、くわえて「Green Technique」は『Richard D. James Album』期のエイフェックス・ツインに通じるドリルンベースな曲に仕上がっていたりと、いわゆる90年代のダンス・ミュージックの要素が色濃く滲みでている。これはおそらく、筆者がおこなったインタヴューでも語ってくれたように、ドリューが90年代のダンス・ミュージック(特にエイフェックス・ツインやマイク・パラディナス)から強い影響を受けていることと無関係ではない。その強い影響が、本作にはハッキリ表れている。このあたりも、「手グセに任せて作った曲を詰めこんだ印象」に繋がるポイントだ。


 とはいえ、ニュー・ヨークのラッパー、リーフ(Le1f)を迎えた「Onyx」など、コラボレーションによって生じる化学反応を求めたであろう曲も収録されている(前出のインタヴューで語っていた、「リーフとも作業した」曲だろうか?)。この点は、ドリューの抑えきれない好奇心が出てしまったのかもしれない。だが、アルバム全体の流れを遮る曲ではなく、むしろスパイスとして効果的に働いている。


 そして、『The Crystal Cowboy』というタイトルも面白い。Thump(サンプ)に提供したミックスでは、映画『Fear And Loathing In Las Vegas(邦題 : ラスベガスをやっつけろ)』(1998)のサントラで知ったという布袋寅泰&レイ・クーパーの曲を選んでいたが、実は本作のタイトル、ドイツ映画『Bandits』(1997)のサントラにある曲とほぼ同名なのだ(もしかして『In The Wild』も、2007年に公開された映画Into The Wild』が元ネタだったりするのだろうか?)。ドリューから話を聞いたとき、なかなかの映画好きだなと感じたこともふまえると、決して偶然じゃないと思えるが、どうだろう?


 ちなみに『Bandits』は、女性の囚人4人によるバンドが刑務所から脱走して逃げまわる様を描いたロードムーヴィー。この映画の結末、それから劇中で使われる「Crystal Cowboy」の歌詞をふまえると、本作はいろんな解釈ができる作品なのだが...。しかしここは、ドリューの「僕はミステリーを残すのが好き」という言葉(これまた前出のインタヴューより)に倣うとしよう。



(近藤真弥)

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