BLACK RIVERS『Black Rivers』(Ignition / Sony Music)

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 90年代末ごろから活動をつづけるマンチェスターのトリオ・バンド、ダヴズの三分の二、ジェズ&アンディー・ウィリアムス兄弟による新バンド、ブラック・リバーズのデビュー・アルバム。


 従来の、オルタナティヴではない20世紀のポップ・ミュージック的感覚にしばられていると、えーっ? スピン・オフ・ユニット? とか軽く見られそうだが、全然そんなことない。少なくとも筆者は、今のところダヴズのどのアルバムより好きだ。


 サイケデリックな音像とか、80年代USオルタナティヴ(いわゆるカレッジ・ロックとか)に通じる(UKバンドとしては少々例外的に強く)人間味あふれる感覚、エレクトロニックな要素も決しておそれないアレンジや空間性という点は、ダヴズと共通している。


 しかしブラック・リバーズには、もっとふっきれた、やけくそ的なポップ性が垣間見られる。シド・バレット在籍時のピンク・フロイドや、70年代後半のブライアン・イーノのソロ作に通じるほど。


 別名義にしたかい、おおありだ! もちろん、やけくそ的とはいっても、ダヴズにあった内省的魅力は、ブラック・リバーズでもひきつがれている。その内省をつきつめた結果の、開きなおり的なかっこよさというか。


 もともとダヴズがデビューしたころ、UKではオアシスがあまりに「国民的バンド」になってしまったことによる次世代リスナーの反動? といった感じで、レディオヘッドが超人気だった。彼らも、まあ内省的な、悪くないバンドではある。初期ダヴズとレディオヘッドの内省ぶりには、たしかに共通点もあった。だから前者も00年代前半には全英トップになれた? いや、そんな決めつけは大雑把すぎるとは思うが、少なくとも『Black Rivers』における彼らの方向性が「あの時代」とは違う、よりコンテンポラリーかつ、さらなる未来に向けて開かれたものとなっていることはたしかだ。


 それは、たとえば、アルバム中で内省度がもっとも高い部類に属する(ボーナス・トラック除く)ラスト・ナンバーの歌詞からも明らかだろう。


〈そして ぼくらは 本当はここにいない/現代的怖れに基づく静謐な生活/連絡が絶たれることの恐怖/携帯メッセージを送ってくれ ここは静かすぎる〉(「Deep Rivers Run Quiet(深い川は静かに流れる)」より)


 だからこそ、先行公開曲「Age Of Innocence」の(筆者のような日本のジジイからすれば結構)衝撃的なヴィデオに秘められたポスト・モダンかつディープなメッセージも、アルバム全体を深く味わえば、きっと理解できるはずだ。



(伊藤英嗣)

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