NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS『Chasing Yesterday』(Suor Mash / Sony Music)

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 2、3年前から、とくにエレクトロニック・ポップ系の音楽で(いや、そうでもないか? ザ・1975とかからも、そんな印象を受けたから)「明るいとも暗いともいえない、ムーディーな...英語では『ちょっと憂鬱』というイメージがある音楽を好きになる」傾向が、自分にはあった。その理由は未だに理論化できていないものの、このアルバムを聴いて(脊椎反射的にではなくて、とても深いレベルで)なるほど! と納得してしまった。そうか、これだったのか、おれの求めていたものは! と......。


 一応バンド名義とはいえ、ソロ第一作目にあたる前作では、まだちょっと暗さが勝っていたような気がする。ここでは、それらのバランスが、もう最高の状態でミックスされている。暗さと明るさを止揚したとか、そんな実存主義(用語)上の問題ではなく、どっちかといえばどろっとした(人間誰でもそうだけど、とりあえずノエル兄貴の)内面が「とにかくさあ、もう、やっちゃうしかねえんじゃね(笑)?」的勢いに押され、決してヘヴィーすぎない形で「パッケージ化」されている。つまり、よりポップになった。


 決してレイドバックしていない渋さと、本当にダサいひとからみればお洒落とかいわれてしまいそうなスマートさが、類い稀なるパワーを秘めたギター・ロックに同居しているさまは...そうだな、なにか例を挙げるなら、シャックに通じるといえるかもしれない。


 オアシス......というかノエルが、かつて自分(ら)が主宰するレーベルから彼らのアルバムを出してたこと、比較的年期の入った音楽ファンなら、憶えてる......かな?


 かつてリヴァプールでペイル・ファウンテインズというポスト・パンク・グループをやっていた、マイケル・ヘッド率いるバンド。日本では(彼らが解散してから)流行ったネオ・アコースティックという用語からの関連で、ファースト・アルバムのほうを名盤に挙げるひとが多かったけれど、モダン・ガレージ・ロックの権化たるセカンドも素晴らしかった。シャックになってからは(いわゆる「二度目の愛の夏」の末期に)突然もろデジタルなリズムを導入したダンス・ミュージック・シングルを出したりで、音楽性の幅をさらに拡げていた。マイケル・ヘッドとノエル・ギャラガーでは知名度が違いすぎるのかもしれないけれど、どこか...すごく直接的な例を挙げてしまえば、アルバムの途中で聞こえるホーン・セクションっぽい音とか、近いものを感じる。


 実は、このアルバム・タイトルを見て、少し心配になってしまった。ちょっと聞き...ではなく「聴き」はじめるのが、はばかられるくらいに......。なんで? とうとう兄貴まで、こんなスタンスになってしまったの? まじで悲しい、と......。


 しかし、ロッキング・オン誌最新号(5月号)掲載のインタヴュー記事を読んで、かなり安心...というより、さすが! と思ってしまった。その取材を担当した西洋のジャーナリストも、やはり、そこが最も気になったんだろう。結構しょっぱなに訊いている(ちなみに、自分がもうひとつ気になったことは最後のほうで尋ねている。こいつ...インタヴューうまいな...というより、ほぼ同世代? なのかもね。エイジアというバンドの80年代初頭に流行った曲のタイトルとのシンクロに関することも訊いてたから:笑)。


 どうやら、このフレーズは、収録曲「While The Song Remain The Same」の一節からピックアップされているらしい。そこで歌われているのは〈We let love lost in anger chasing yesterday(昨日を追いかけることで、怒りのなか、愛を見失ってしまう(=前に進むんだ)〉。


 だから、その曲名が、ぼくがどうも苦手なバンド(とはいっても、90年代に買った、全オリジナル・アルバムのCDボックス・セットはまだ持ってる。いつか好きになるかも......。また聴いてみます:笑)のアルバムの名前だっけ? に似てるという事実は完全無視して、記憶のなかでは決して消えないであろう、このアルバムに入っている素晴らしい曲たちがまだ流れているうち、10回近く何度もプレイしつづけているうちに、これを書いた。


 ぼくは言う。今年最初の「必聴盤」!



(伊藤英嗣)


【編集部補足】

 カヴァー・アートは「15曲(5曲のボーナス・トラック入り。iTunesでも、まだ現時点では買えます)入りヴァージョン」のほうにしておきました。よくある「無駄なボートラ」なんかじゃ全然なく、そっちのほうが、よりポップに聞こえるから。ラス前が「In The Heat Of The Moment」のダンス寄りミックスってのが、クラブでかけるかも? という自分にはありがたいし、ラスト曲のタイトルが、また最高。「Leave My Guitar Alone(おれのギター? ほっといてくれ!)」。まあ、ノエルのプレイが下手とは全然思わない。そりゃ、ジミー・ペイジには負けるのかも、だけど? これ以上の言及は......伊藤はツェッペリンの熱心な聴き手じゃないし、無理(笑)。

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