MUMDANCE & LOGOS『Proto』(Tectonic / Beat)

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 去年ミュージック・マガジンにて、アルバム『Friendly Bacteria』リリースのタイミングでミスター・スクラフにインタヴューする機会に恵まれた。ミスター・スクラフといえば、Ninja Tune(ニンジャ・チューン)などから良質な作品を発表しつづけているイギリスのベテラン・アーティスト。80年代からDJ活動をしており、長年ダンス・ミュージック・シーンを見つめてきた人物。そんな彼にインタヴューできるということで、筆者はダブステップ以降のベース・ミュージックについて訊いてみたのだが、返答のなかに〝なるほどな〟と思える話があった。それは次のようなもの。


「最近のベース・ミュージックは、シカゴ・ハウスやアシッド・ハウスの影響を強く受けている」


 このことを筆者が強く感じたのは、アレックス・ディーモンズという男が、2013年に発表した「Through」を聴いたときだった。この曲は、アレックスのシングル「East London Club Trax Volume 3」(2013)に収められたもので、シカゴ・ハウスに通じるリムショットの連打とざらついたハイハットの音が印象的。Night Slugs(ナイト・スラッグス)を主宰するボク・ボクがResident Advisorに提供したミックスでも使用していたから、このミックスを介して初めて聴いたという人もいるだろう。他には、マーティンが去年発表したアルバム『The Air Between Words』も、昨今のベース・ミュージックとシカゴ・ハウスの蜜月関係を象徴する作品だといえる。


 そうした流れは、マムダンス&ロゴスのファースト・アルバム『Proto』にも反映されていると思う。それは、「Legion」や「Move Your Body」といった曲で顕著に表れている。とはいえ、このアルバムにはシカゴ・ハウスやベース・ミュージックだけではない、たくさんのスタイルが詰めこまれている。「Dance Energy (89 Mix)」は90年代初頭のレイヴ・ミュージックを連想させ(一瞬ジョイ・ベルトラム「Energy Flash」も連想したが)、さらに「Border Drone」ではフリープ・テクノが見え隠れするなど、いわゆるテクノ色も強い。マムダンスとロゴスは、イギリスのベース・ミュージック・シーンで名をあげたトラック・メイカーだが、ロゴスは2013年発表のアルバム『Cold Mission』でもテクノを多分に取りいれたサウンドを鳴らしていた。このことをふまえると、『Proto』はロゴスの嗜好が多く反映された作品と言えるかもしれない。ひんやりとしたマシーナリーなサウンドスケープという『Proto』の特徴も、『Cold Mission』を想起させる。


 また、ひとつひとつの音が攻撃的でハードに鳴り響くのも、『Proto』面白いところだ。たとえば、ハビッツ・オブ・ヘイトはシングル「Habits Of Hate」で、インダストリアル・テクノとベース・ミュージックを接合してみせたが、この試みに近いことが『Proto』でもおこなわれている。ただ、マムダンスとロゴスの場合、それがインダストリアル・テクノではなくハードコア・テクノのように聞こえるのが面白い。




(近藤真弥)



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