MOURN『Mourn』(Captured Tracks / Tugboat)

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 まずは、いくつかアルバムを挙げていく。セックス・ピストルズ『Never Mind The Bollocks』、ザ・クラッシュ『The Clash』、ジーザス・アンド・メリーチェイン『Psychocandy』、マニック・ストリート・プリチャーズ 『Generation Terrorists』、スリーター・キニー『Sleater-Kinney』、スーパーカー『スリーアウトチェンジ』、アークティック・モンキーズ『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』、ケイジャン・ダンス・パーティー『The Colourful Life』...といったところで、やめておこう。他にも挙げたい作品はたくさんあるが、きりがない。


 さて、いま挙げた作品群に共通するのは、〝初期衝動が詰まったアルバム〟ということだ。粗もなくはないが、世代を越えて響くであろう瑞々しさをこれでもかと放つアルバム。そのような作品は、いつでも作れるわけではない。タイミングと少しばかりの運が交差しなければ、聴き手の前に現れることはない。しかし、だからこそ、いつの時代も〝初期衝動が詰まったアルバム〟は人の心を揺さぶり、〝その時〟にしか残せない音が克明に記録されているという意味でも重要でありつづけている。


 バルセロナのモーンによる本作『Mourn』は、そんな〝初期衝動が詰まったアルバム〟である。本作がデビュー・アルバムとなるモーンは、ジャズ(ヴォーカル/ギター)、カーラ(ヴォーカル/ギター)、レイア(ベース)、アントニオ(ドラム)の4人組バンド。全員が10代で、最年少のレイアは現在15歳。これだけでも十分興味深かったが、その興味は「Otitis」のMVを観てさらに増してしまった。ラモーンズのTシャツに目が行きつつも、ピュアでまっすぐな音をかき鳴らす少年少女たちの姿に、文字通りノックアウトされてしまったのだ。


 正直、演奏が上手いと言えば嘘になってしまう。「You Don't Know Me」に出てくる、《私のことをベイビーって呼ぶから 私はファック・ユーと答えた》という一節が示すように、歌詞も青臭さを漂わせる。とはいえ、ラモーンズ、PJハーヴェイ、パティ・スミス、セバドー、スリター・キニーなどから影響を受けたという音楽性はセンスに満ちており、そのセンスがすべてをOKにしてしまっている。それに、一聴すれば耳に残るメロディーも秀逸だ。


 もしかすると、本稿を読んでいる人のなかには、モーンをハイプだと見ている者もいるだろう。だが、「Misery Factory」に登場する、《私たちは立ちあがらなければならない 目を眩まされた人たちのためにも》という一節は、〝若造〟の一言で一笑に付すことはできない鋭さを持っている。しかもなにより、アルバム自体が焦燥と怒りを醸しながらも、確かな煌めきを放っている。そして、その煌めきは、あなたの一生を変える20分でもある。



(近藤真弥)

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