VIET CONG『Viet Cong』(Jagjaguwar)

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 元ウィメンのマット・フレーゲルを中心とした4人組バンド、ベト・コン。このバンド名、ピンときた方も多いと思うが、1960年に組織された南ベトナム解放民族戦線の通称を引用したものだ。となれば、ポリティカルな姿勢を打ちだしているのかと思う方もいるだろう。しかし今のところ、そうした姿勢は見られない。


 それでも、デビュー・アルバムとなる本作『Viet Cong』は、バンド名が聴き手にあたえるであろうイメージとシンクロする内容となっている。まず、オープニングを飾る「Newspaper Spoons」のイントロ。このイントロを聴くたびに、どうしても軍隊の行進をイメージしてしまうのだが、どうだろう? さらには、その名もズバリ「Death」という曲があったりと、死の匂いも振りまいている。ただ、「Death」についてはさまざまな想像ができると思う。たとえば、〝戦争〟を想起させるベト・コンというバンド名と繋げて聴いてみたりとか。あるいは、ウィメンのギタリスト、クリス・ライマーが2012年にこの世を去ったことと関連づけるとか。また、ステージ上で喧嘩したのをキッカケに解散へ至ったというウィメンの背景をふまえると、「March Of Progress」の歌詞も意味深に聞こえる。この曲は、次のようなフレーズで締められるからだ。


〈What is the difference between love and hate?(愛と憎しみの違いは何だ?)〉


 本作の歌詞は、聴き手の想像を促す言葉選びが目立つが、ベト・コンにまつわる物語を頭に入れてから触れてみると、その想像をより深いものにすることができるはずだ。


 サウンドは、70年代後半から80年代前半にかけてのポスト・パンクを連想させる。シャープなギターが印象的な「Pointless Experience」は、『Heaven Up Here』期のエコー・アンド・ザ・バニーメンを思わせるし、そもそもアルバム全体を包む雰囲気がもろバウハウスなのだ。そこに、クラウトロックの要素とサイケデリックなサウンドスケープをスパイスとして振りかけることで、本作をより魅力的な作品に仕上げている。


 そんな本作は、お世辞にも〝斬新〟な音楽性を披露しているわけではない。だが、これまでたくさんのアーティストたちが残してきた素晴らしい音楽的遺産を現在に通用する形で表現しようと試み、それを見事に成功させたという点だけでも、本作は称賛に値する。



(近藤真弥)

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