THE POP GROUP『Citizen Zombie』(Freaks R Us / Victor)

| | トラックバック(0)
The Pop Group『CITIZEN ZOMBIE』.jpg

 ポスト・パンクを代表するバンド、ザ・ポップ・グループが35年ぶりのオリジナル・アルバム『Citizen Zombie』をリリースする。このニュースだけでも多くの人に驚きをあたえたのは言うまでもないが、そのアルバムをプロデュースしたのがポール・エプワースというニュースにも驚かされた。


 ポールといえば、アデル、U2、 コールドプレイとも仕事をしている大物プロデューサー。そんなポールを語るうえで欠かせないのが、2000年代に起こったポスト・パンク再評価のブームだろう。このブームはザ・ラプチャー、ブロック・パーティー、マキシモ・パーク、ザ・レイクス、フューチャー・ヘッズなど多くの良質なバンドを輩出したが、これらのすべてをポールはプロデュースしている。さらに自らもフォンズ名義で興味深いリミックスを発表することで、ポスト・パンク再評価の盛りあがりに一役買っていた。いわば、ポールのプロデュースでザ・ポップ・グループがニュー・アルバムを完成させたということは、オリジナル・ポスト・パンク世代によるポスト・パンク再評価以降の更新がおこなわれているということ。こうした邂逅も、『Citizen Zombie』の面白さだ。


 さて、その邂逅によって生まれた音は、端的に言うと洗練されている。もちろん、マーク・スチュアートの叫びに近いヴォーカル・スタイルや、メッセージ性が強い歌詞は健在だ。ダブ、ファンク、パンク、カリプソなどをドロドロになるまで撹拌させたアクの強いサウンドスケープも、ザ・ポップ・グループのファンにとってはお馴染みだろう。しかし、ひとつひとつの音を丁寧に聴いてみると、そのすべてが絶妙なバランス感覚のうえで成り立っているのがわかるはず。『Y』や『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の頃みたいに、ただ全力で音を鳴らすだけでなく、バンド全体のアンサンブルに対する意識が強い。そういった意味で、現在のザ・ポップ・グループは、かつての破壊的なサウンドを鳴らしていないとも言える。この点をどう評価するかによって、『Citizen Zombie』に対する態度が変わってくると思う。


 とはいえ、筆者からひとつ言わせてもらえれば、メンバー全員がキャリアを積み重ねてきたなかで、それなりに熟成していくのは避けられないことだ。若いフリをする年寄りたちを見てカッコいいと思うだろうか? 筆者はそう思わない。しかし、だからこそ筆者にとって『Citizen Zombie』は、とても正直なアルバムに聞こえる。このアルバムでザ・ポップ・グループは、〝今のザ・ポップ・グループ〟を披露しているからだ。


 大人にならなければ生みだせない音は、確かに存在する。そういった味わい深さを示してくれるのが『Citizen Zombie』という作品だ。



(近藤真弥)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: THE POP GROUP『Citizen Zombie』(Freaks R Us / Victor)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/4049