トラックスマン

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TRAXMAN


今回はマイクを握って歌っちゃうよ(笑)


2014年の日本の夏は本当に暑かったが、8月9日の代官山ユニットも熱かった。シカゴよりトラックスマンが来襲したからだ。


昨今の音楽状況にとって大きなトピックとなったジュークという音楽の生きる伝説にして、熱に満ちたトラックとDJプレイで世界中のダンスフロアを揺らしているトラックスマン。来日は2012年10月以来となる。


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 前回のプレイはシカゴ・ハウスからジュークまでの歴史をクラウドに伝えるようなものだったが、今回はパーソナルな側面が強かったように思う。筆者にも「影響を受けたのは、ジャズ、ファンク、ソウル、ロック、ワールド・ミュージック、クラフトワークなどの電子音楽、いろいろあるよ」と語ってくれたが、こうしたリスナーとしての嗜好が際立っていた。これはおそらく、彼が日本の観客をリスペクトしていることも無関係ではないはず。日本でプレイすることについて訊くと、次のように答えてくれたからだ。


「愛されているというのがすごくわかる。スピリチュアルなレベルで繋がれることが、1回目のときよりもさらにハッキリした。だから殻を破って、自分を見せに来た。今回はマイクを握って歌っちゃうよ(笑)」


 実際に歌うことはなかったものの、終始どこかリラックスした雰囲気を醸していたのは、前回と比べて日本の観客にオープンだったからだと思う。もちろん観客は盛り上がりっぱなし。トラックスマンを暖かく迎えていた。フットワークというジュークに欠かせない高速ダンスとモッシュが同時に起きるのは、日本ならではの光景だと言えるだろう。


 さらに、あらためて思い知らされたのは、トラックスマンが優れたエンターテイナーであるということ。先日おこなわれたサマーソニック2014でTOKIOとロバート・グラスパー・エクスペリメントを観て思ったことでもあるが、魅せることができるバンドやアーティストはジャンルを飛び越える。前者がアイドルで後者はジャズ、そしてトラックスマンはジュークと括られがちだ。とはいえ、そういった括りに関係なく「カッコいい」とか「面白い」と思わせてくれるという点において、いま挙げた3者は共通しているのだ。筆者からすれば、トラックスマンがフジロックやサマーソニックなどの大規模フェスに出演して大勢の観客を盛り上げるという光景は、まったく不自然なものではない。こうした"魅せる"という側面は、内容重視のコアな音楽ファンは特に軽視しがちである。しかし、面白い音楽を広めていくことを考えれば、やはり"魅せる"ことも大切だ。何より魅せてもらったほうは楽しめるし、そのとき味わった興奮をキッカケにして、より強い興味を持つことだってある。このことをトラックスマンは、本能的に知っているのではないか? そう思えるプレイを今回の来日では披露してくれた。


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 さて、肝心のインタヴューは出番30分前におこなったこともあり、あまり深い話ができなかったのは否めない。だが、面白い話もいくつか聞けたので紹介しよう。例えば、アシッド・ハウスについて訊いたときに返ってきたこの答えなど。


「アシッド・ヘッズっていう80年代後半にあったクルーにいたんだ。アシッド・ハウスが好きな人たちが集まっていた。(自分のPCに入っている『ACID LINE』という曲を再生しながら)このトラックは、自分の表現において大きな部分だ。これを再現するのに2日かかったんだ。TB-303はすごく難しいから、昔のアシッド・ハウスを再現するのは大変だよ。この再現だってまだ完璧じゃない。すごく頑張ったんだけど、できねえよ!、みたいな。ちなみにオリジナルはこれ(と言って、フューチャーの『Acid Tracks』を再生)。惜しいところまでは行くけど、オリジナルと違う!、みたいなさ。友達に連絡して聴かせても、やっぱちょっと違うなって言われるし。違うね!ってわざわざ言われる!」


 まさかアシッド・ハウス・クラシックの再現トラックを作っていたとは! アシッド・ハウスの強い影響力を知ると同時に、トラックスマンは本当に音楽好きなんだなとしみじみ感じた。そうした再現トラックを集めたアルバムも聴いてみたいと言ったところ、「OK!それはやるだろうね」と返ってきたから、もしかするとトラックスマンによるアシッド・ハウス・アルバムが聴ける日も近い、かもしれない。


 そして最近は、ジュークのビートにヴォーカルを乗せた曲が増えてきたこともあり、ヴォーカルをフィーチャーした曲は作らないの? とも訊いてみた。というわけで、そのときの答えをもってこの記事は締めくくらせてもらう。


「いままさに、それをやろうとしてるところだよ。曲に合うヴォーカリストを探すのが難しいけどね。ソウルがこもってる人が少ないからなかなか見つけられない。チャカ・カーンとかアレサ・フランクリン、それからシャーデーみたいなのに匹敵するような人はなかなかね。俺が納得できる歌声で、なおかつ曲に合う人じゃないとダメだから。見つかるまでは、自分のグルーヴを探求しつづけるという感じかな」



2014年8月

取材、文/近藤真弥

通訳/Kent AlexanderPan Pacific Playa



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トラックスマン
『ダ・マインド・オブ・トラックスマン Vol.2』
(Planet Mu / Melting Bot)

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