BY THE SEA『Endless Days Crystal Sky』(War Room / Tri-Tone)

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 まずは、このアルバムのリリース直後に(昔だったら「セカンド・カット・シングル」って感じで)ユーチューブ公開された2曲目「You're The Only One」のヴィデオを観て「おおっ!」と思ってしまった。


 曲自体も素晴らしい、写ってるメンバーたちの様子にも共感が持てた。最近はリリック・ヴィデオ(歌詞が入ってるやつ、ってことね)も珍しいものではなくなってきたとはいえ、それだけじゃない。イントロのギター・コード進行まで「公開」しちゃってる...という! とくに西洋では何世紀もつづく「フォーク・ミュージック」の根底にある「みんなで歌おう、プレイしよう」というD.I.Y.スピリットを、すごくいい形で受けついでいる。


 それがなかったら、今となってはぼくも気づかなかったかもしれないけれど、A(メジャー)7thコードもちゃんと入ってる、っつーね! いや、80年代前半に本国(や欧米の一部)で人気の高かったポスト・パンク一派...日本では90年代以降にネオ・アコースティックなんて呼ばれるようになったバンドたちの特徴のひとつも、メジャー7thコードを多用してることだった。エヴリシング・バット・ザ・ガールのふたりあたりはその典型って感じだったし、アズテック・カメラなんか、たしか歌詞にまで(笑)それを出してた...。


 全体的に言って、ぼくのような(当時を体験した)ジジイは、これ、かなり80年代のUKポスト・パンク・インディーを思いださせるかも? と言いたくなってしまう部分は、たしかにある。どこかサイケデリックな雰囲気もあって、ポップでありつつフォーク・ロック的で、そのものずばりではないけれど、いわゆるシューゲイザーにつながってくる味もなくはない。


 それはUKバンドではなかった(80年代には一時UKに住んでたにしても結成地はオーストラリアだった)し、00年代の再結成時には(当時ぶいぶい言わせてた)USインディー・バンド関係者がバックを務めていたので、まさに無国籍バンドと言ってもいいような、ザ・ゴー・ビトウィーンズに、とてもよく似ている曲まであったりして。


 8曲目「The Stranger Things」なんだけど、これ、シンコペーションを通りこして変拍子っぽく響いてしまうリズム構成も含み、かなり彼らの「Cattle And Cane」っぽい。もし意識していない(いわゆるオマージュではない)とすれば、ここまで似ることってあるのか? というくらいに。


 ただ、もちろんこのアルバム、決して「リヴァイヴァル」っぽくは全然ないどころか、今の空気にジャストすぎるくらい合っている。調べてみたところ、彼らはUKリヴァプール近郊のバンド、ザ・コーラル周辺とも仲がいいようで、それを(たしか)脱退したビル・ライダー・ジョーンズも参加している。でもって、これは(前作が結構評判よかったらしいので)満を持してリリースした、セカンド・オリジナル・アルバムらしい。


 なるほど、リヴァプールか。90年代のそれを代表するバンドのひとつだったザ・ブー・ラドリーズの初期ほどはポスト・パンク・オルタナティヴ色が強くはないけれど、彼らの「爽やかとも言えるポップ・サイド」が好きだったら、これもいけるかな? そして『Endless Days Crystal Sky』というアルバム・タイトル(なんとなく、よっつめの単語はSkiesと複数形にしたほうが語呂がいい気もするんだけど、逆にそうじゃないところが、かっこいい!:笑)における言葉の使い方などは、そう、80年代初頭の同地を代表するバンドだった、エコー&ザ・バニーメンを連想させる...。


 要するに「いい意味で、伝統を継承する」ってのは、こういうことなんじゃないかな。一聴地味に感じるかも(たとえば、でっかいお店の試聴機で聞いたらスルーされちゃうかも?)だけど、実にグレイトなアルバムだと思う。




(伊藤英嗣)


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