PUSS N BOOTS『No Fools, No Fun』(Blue Note / Universal)

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 ノラ・ジョーンズが組んだ女性3人組バンドのファースト・アルバム。メンバーのひとりサラ・ドブソンはジェシー・ハリスのレーベルからデビューした人、キャサリン・ポッパーはライアン・アダムス(リリースされたばかりの新作もグレイト!)のバックで活動していた...という経緯からも想像できるとおり、ギターを手にしたシンガー・ソングライターもしくはアメリカン・オルタナティヴ・カントリー・ロック色の強い作品となっている。


 全12曲中、ノラが1曲、サラとキャサリンが2曲づつオリジナル・ナンバーを提供しているほかは、ジョニー・キャッシュ、ザ・バンド、ウィルコらの歌唱/演奏で知られるもの。「みんなで歌おう、誰の曲でもない」というフォーク・ミュージックの(いい意味での)伝統を受けついでいる。


 1曲目がトム・パクストン「Leaving London」、ちょうど真ん中あたりに位置する6曲目がニール・ヤング「Down By The River」という選曲の妙も素晴らしい。「愛する人に会いたい、明日にはこの町を出よう」と歌われる前者で描かれた町の冷たさは、今の時代にも似合いすぎるほど似合ってる。そして、トムのような男性が歌ってもプス・ン・ブーツのような女性たちが歌っても、悲しくもあたたかい人間の心がじんわりと胸にしみてくる。


 後者「Down By The River」は、彼がクレイジー・ホースと組んでリリースした初のアルバム『Everybody Knows This Is Nowhere』でも、ど真ん中に収められていた名曲だ。永遠の傑作たるその作品の冒頭は「Cinnamon Girl」でクロージングは「Cowgirl In The Sand」だった。どちらも男性の立場から女性に向けて歌われた曲としてぼくが最も好きなもの(軽く数百はあると思われ...:汗&笑)のひとつ、女性が歌うのは似合わない。だが、こんな事実は、まるで幻が訴えかけるかのごとく、彼女らこそ「Cinnamon Girl」であり「Cowgirl In The Sand」(のひとり)であるとむしろ明白に語っているようだ...って、彼女ら自身はたぶん意識してないと思うけど(笑)。


 プス・ン・ブーツというバンド名もおもしろい。今回は、字義を明らかにするためこの表記にしたが、プスンブーツというのも、もちろんあり。ロックンロール(ロック・ン・ロール/Rock 'n' Roll/Rock And Roll)と同じように。そして『バカがいなけりゃ、お楽しみなんて存在しない』というアルバム・タイトルが、また最高。こういった言葉の使い方の妙が、「ジャズ界の大御所であるブルー・ノート・レコーズから純正フォーク・ロック・アルバム!」というトゥー・シリアスもしくは「タグ」に縛られた堅苦しい評価に傾いてしまうことを、軽やかにかわしている。最近日本で、ジャズを新しい視点で評価する本(編注:『Jazz The New Chapter』シリーズ)が話題になっているようだ。ぼく自身は読めていないのでなんとも言えないのだが、そんな人たちがいる一方で、彼女らのような人たちもいる(笑)。いいバランス...なんじゃないかな。こういった部分は、ブルー・ノートの現社長が元ウォズ(ノット・ウォズ)のドン・ウォズであることの影響も決して小さくないだろう。


 風通しの良さ、ピカイチ。日本の秋にも、合ってるよ。



(伊藤英嗣)

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