KINDNESS『Otherness』(Female Energy / Beat)

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 2012年のファースト・アルバム『World, You Need A Change Of Mind(世界よ...必要なのは変心)』は、その年のトップ10にあげられるくらい愛聴した。初期そして最近のフェニックスとの関係でおなじみフィリップ・ズダールとの共同作業による「クラブ・ミュージックとポップ・ミュージックの交差した地点」感が、なによりたまらんかったというか。


 この待望のセカンド・アルバムでは(ファーストのように、とくに「ひき/おしの強い特定の誰か」というより)世界中のさまざまな新進クリエイターたちとコラボレーションをおこなうことで、自らの世界を深めつつ、理想的なスケール・アップを遂げている。


 前作およびこの新作に共通する特徴といえば、ラテンやワールド・ミュージック的要素と並んで、いわゆるジャズのエッセンスを、実に心地よくとりいれていること。単なるムードというレベルを超えて(いくぶん変態的な)ポップ・ミュージックとジャズを深く融合させてアーティストは、昔からたくさんいた。前者側から後者に接近したものといえばスティーリー・ダンとか、その逆であればマイルス・デイヴィスとか...。ただ、その「混ぜ方」の印象は、彼らとかなり異なる。まさにニュー・フェイズ、今の時代にふさわしく新鮮なものとなっている。


 それこそ、マイルス・デイヴィスが伝道師となり、今や普通の日本語にまでなっている「クール」というセンスのとらえかたが、なんか昔と全然違うというか。

 

 たとえば、サイケデリック・ロックにはじまって最終的にはUKフリー・ジャズと区別がつかないほど、ややこしくもかっこいい音楽をやっていた、カンタベリー一派のソフト・マシーン。彼らの最高到達点と思える『Six』(1973年)あたりに通じる部分もあるのだが、80年代末~90年代初頭の、いわゆるアシッド・ジャズを思わせる「うたごころ」も、これでもかというくらい備えている。ただ、前者が持っていた「知的にかっこいい感じ」の記号性も、後者が持っていたよりモード的にファッショナブルなそれとも無縁な感じ。その塩梅が、たまらなく素晴らしい。


 元ライトスピード・チャンピオン/現ブラッド・オレンジことデヴォンテ・ハインズ、スウェーデンのエレクトロニック歌姫ロビン、デーモン・アルバーンらと共演経験もあるガーナ人ラッパーのマニフェストなど、コラボレーターの人選にも、それは見てとれる。


 結局のところ「クール」になりきれるはずもない。なにせ、芸名がカインドネス(人間らしい思いやりの心)だからね。とはいいつつ、そこに縛られたくもないんだろう。今回のアルバム・タイトルは『アザーネス(それ以外)』ときた...。この、ひねくれかたも含み、スーパー・グレイト、だ!



(伊藤英嗣)

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