AnD『Cosmic Microwave Background』(Electric Deluxe)

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 2013年も終わりに差しかかったころ、筆者はツイッターで「来年はハード・ミニマル」という予言めいたことを呟いた。この年は、イギリスのシフテッドが『Under A Single Banner』という、《Modern Love》などを中心としたポスト・インダストリアルの潮流とも共振できるハード・ミニマル・アルバムを発表したし、クラウズはティガ主宰の《Turbo》から、ダブステップ以降のベース・ミュージックとジャングル、そしてハード・ミニマルとインダストリアルを接続した『Ghost Systems Rave』をリリースしていた。それゆえ先に書いた予言を呟いたのだが、今年のダンス・ミュージック・シーンを見ていると、それもあながち的外れではなかったと我ながら思う。政治的メッセージが込められたパーク『The Power And The Glory』には、初期のジェフ・ミルズを想起させるハード・ミニマル・トラック「Dumpster」が収められ、現在16歳の新鋭ハッパは、マンニ・ディーと結成したハビッツ・オブ・ヘイトのシングル「Habits Of Heit」で、2010年代向けにダブステップを再解釈するなかでハード・ミニマルのエッセンスを取りいれている。パークはもともとハード・ミニマルに通じるトラックをいくつかリリースしていたが、ハッパのような新世代がハード・ミニマルに接近したのは見逃せない動きだろう。


 マンチェスターのデュオ、アンドによるデビュー・アルバム『Cosmic Microwave Background』も、こうした流れの上にある作品だ。本作を聴いて真っ先に思い浮かぶのは、初期のジェフ・ミルズ、サージョン、レジスといった、いわゆる90年代のハード・ミニマルやインダストリアル・テクノと言われるサウンド。このあたりは、長年のダンス・ミュージック・ファンにとって懐かしく感じるかもしれない。一方で、「Photon Visibillty Function」のグルーヴはハビッツ・オブ・ヘイトに通じるものとなっており、言ってみればダブステップを通過したインダストリアル・テクノとも言えるトラック。このトラックは、本作が過去のテクノを模倣しただけの懐古的作品ではないことを証明している。


 そして、ハード・ミニマルやインダストリアル・テクノにありがちなグルーヴ感の乏しさとも本作は無縁だ。ベース・ラインとリズムの組みあわせ方も秀逸で、アルバムとしての統一感を作りつつもグルーヴは多種多様。ゆえに本作は、ダンスフロアに相応しいのはもちろんのこと、リスニング・アルバムとしても優れている。


 激しくも冷ややかで、破壊的。そんなテクノ・アルバムに仕上がっているが、よくよく聴いてみると、アンドの巧みなサウンド・プロダクションを楽しめる深い作品。



(近藤真弥)



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