Shin Rizumu『Shin Rizumu』(Ano(t)raks)

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 現役高校生Shin Rizumu(シンリズム)の音楽に出逢ったのは、《Ano(t)raks》からリリースされた「処方箋ep」を聴いたとき。まず驚いたのは、幅広くいろんな音楽を聴いてきたことがすぐさまわかる洗練されたサウンド。それはキリンジ、ブレッド&バターといった日本の優れたポップ・マエストロを想起させ、高校生とは思えない老練さを感じさせるものだった。しかし、歌声は高校生らしい瑞々しさを宿している。この両極端とも言えるギャップに筆者は、文字通りハマってしまった。


 そうしたギャップはファースト・アルバム『Shin Rizumu』でも健在だが、より多くの人にShin Rizumuの名が知られていくキッカケになるという点で本作は、彼の作品群のなかでも特に重要作となりえるものだ。作詞/作曲/編曲はもちろん、演奏もほぼすべてひとりでこなす多才さに加え、気持ち良い音に耳馴染みのよい歌という、いわばポップスとしての普遍性と高い完成度も備える。特にロディ・フレイムといったギター・ポップの影響を窺わせる綺麗で親しみやすいメロディーは、群を抜いて素晴らしい。


 そのような普遍性に込められた音楽要素も、実に多彩なものだ。ラウンジ・ミュージック的な心地よさが際立つ「喫茶aori」はボサノヴァを感じさせ、他にもリトル・エスターなどの50年代ソウル、さらにはジャズの要素も見いだせる。こうした普遍性と高い音楽的彩度の共立は、毎週レコード・ショップで熱心に盤を掘る音楽中毒者のみならず、音楽は忙しい日常生活の片手間に聴くくらいというライト・リスナーまで取り込める可能性を孕んでいる。


 また、さまざまな文脈から解釈できる幅広い音楽性は、ネット以降の感性だと言える。というのも、本作を聴いていて強く感じるのは、何かしらの絶対的な柱を中心にいろんな要素が細かく散りばめられた、いわゆるコラージュ的な音像ではないということ。例えば、ニュースサイトのトップページを見ると、膨大な量の見出しとバナーが否応なしに飛び込んでくるが、本作に込められた音楽的要素の多さに触れたときも、それと似たような感覚に襲われたのだ。言うなれば、多種多様な小片を寄せ集め、それらを繋ぎあわせひとつの絵を作り上げる装飾手法のモザイクに近いサウンド。


 だからこそ本作は、耳が肥えた玄人リスナーも驚かせる新鮮さを持つに至ったのかもしれない。それはつまり、Shin Rizumuが文字通りの "新感覚" を持ったアーティストであるということだ。


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