TLAOTLON「Ektomists」(1080p)

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 エイフェックス・ツインの変態性とアクトレスの急進的な実験精神が混在した音楽ないかなあと妄想していたら、本当にあった・・・なんてことを言いたくなる面白さが、「Ektomists」にはある。


 本作を作り上げたのは、オーストラリアはメルボルン出身のジェレミー・クブラフなる男。もともとマリンヴィルというインディー・ロック・バンドでキーボードを担当していたりと、いわゆるテクノ/ハウス畑の出身ではない。だが昨今は、そうした出自を持つ者がテクノ/ハウスを更新することも珍しくない。それこそ、ポカホーンテッドというノイズ・バンドをやっていたアマンダ・ブラウン、さらにはブラック・アイズというハードコア・パンク・バンドに在籍していたアイタルなど、いわゆる《100%Silk》周辺にはそのような者が多くいる。


 そういった意味でジェレミーは、《100%Silk》が中心となったテン年代インディー・ダンスの潮流を受け継いだアーティストだと言える。つまり、ハウス・ミュージックの要素を打ち出しながらも、ダンスフロアとライヴハウスを跨げる高い順応性があるのだ。本作は、体を揺らし心を躍らせるダンス・ミュージックとしても機能するし、ひとりベッドルームで寝転びながら聴き浸るチル・アウト・ミュージックとしても機能する。言ってしまえば、リスナーの数だけ側面が存在する作品なのだ。


 しかし、DJにとっては取り扱いに困る代物でもある。確かに、かろうじて維持された4/4キックの反復による中毒性は、本作のダンス・ミュージック的側面を象徴している。ところが、そのキックに交わる音は一定のフレーズを捨て去り、さながら飛び道具のように現れては瞬く間に消えてしまう。その現れるタイミングもひたすら聴き手の予想を裏切るもので、人によっては不快感を抱くのでは? といらぬ心配をしてしまうほど安定感に欠ける。本作は終始、音と音の間に生じたズレが合うことなく進んでいくのだ。この不思議なグルーヴの類例を強いて挙げれば、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーになるだろうか。とはいっても、そのグルーヴが好き嫌いハッキリ分かれるものであることは揺るがない。それゆえ聴く人を選ぶ作品になってしまったが、そのことを批判する気はさらさらない。むしろ、このような作品があってもいいとすら思う。時に発展と拡張は、極端な方向性をキッカケにして生まれるのだから。そんな過激さが、極彩なサウンドスケープを描く本作には存在する。



(近藤真弥)



【編集部注】「Ektomists」はカセット・リリースです。デジタル版は《1080p》のバンドキャンプで購入できます。

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