MANIC STREET PREACHERS『Futurology』(Columbia / Sony)

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 世の中に対しどれだけ怒りを抱いていたとしても、その怒りを保ちつづけることは難しい。膨大なパワーもたらしてくれる初期衝動は、時を経て "惰性" になる宿命からは逃れられず、そのことに納得がいかない者は苦悶する。あれだけ怒り、不満をたくさん抱えながらも、どこかで緩さを持ってしまう自分に。


 とはいえ、そうした苦悶と上手く折りあいをつけ、前を向いて歩みつづける者もいる。それこそ、マニック・ストリート・プリーチャーズがそうだ。サード・アルバム『The Holy Bible』までは、リッチー・エドワーズという創造力あふれる男と共に、そして彼が私たちの前から消えてしまったあとも、ジェームス、ニッキー、ショーンの3人は音楽シーンの第一線で活躍している。まあ、『This Is My Truth Tell Me Yours』や『Lifeblood』は少々守りの姿勢が強く、内省的な雰囲気を醸していたが、こうした人間臭さも彼らの魅力。完璧ではないからこそ、迷いながらも自分なりの答えをその都度導きだし生きていくという人の本質的な泥臭さを体現している。当たりまえといえばそうだが、その当たりまえなことがまた難しいのだ。しかも彼らは、自分たちの本質である反骨精神に忠実なまま、現在に至っている。アルバム・チャート上位の常連バンドという商業主義の役目を果たしつつ、自分たちの主張や信条はしっかり伝える。イギリスは日本と比べてそれが容易いというのは確かにそうだ。しかし、それでも難しいことに変わりはない。彼らはそんな難しい仕事を20年以上もつづけている。彼らが影響を受けたと公言するザ・クラッシュよりも長く。


 前作『Rewind The Film』と対を成す形で作られた『Futurology』は、マニック・ストリート・プリーチャーズの長い歴史を彩るに相応しい良盤だ。アコースティック・サウンドが中心にあった前作とは打ってかわってエレクトロニックなプロダクションが際立ち、どこかレトロ・フューチャーな世界観が見え隠れする。クラウトロックやポスト・パンク色が濃く、ノイ!、クラフトワーク、さらには『Low』期のデヴィッド・ボウイなどがちらつく。このような要素はこれまでの作品でも度々うかがえたが、本作のようにそれが中心となっているアルバムはなかった。同じような作品を作らないのも彼らの特徴だが、それは本作でも貫かれている。


 もちろん、彼らのファンにはお馴染みの知性あふれる歌詞も健在。こちらも内観的で陰鬱な言葉が目立った前作とは違い、ポジティヴで前向きな言葉が多く用いられている。政治的なテーマに足を踏みいれることも忘れていない。戦争経済なる言葉が飛び交う現在を揶揄した「Let's Go To War」が好例だろう。さすがに、リッチーがいた頃の "4人対世界" という大言壮語なマニック・ストリート・プリーチャーズではないが、それを現在の彼らに求めるのはお門違いだ。時代が変わるように、人も変わり成長するのだから。



(近藤真弥)

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