HALF SPORTS「MILD ELEVATION」(DRILL)

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 最近、チャイルドフッドのデビュー作『Lacuna』と、スプーンの8作目『They Want My Soul』を繰り返し聴いている。アシッド・ハウス、シューゲイザー、チルウェイヴといった80年代以降の様々な音楽要素を取り入れたバンドがチャイルドフッドだとしたら、スプーンは無骨なまでにルーツ・ロック志向で60~70年代の伝統的なソウル、ファンク色も匂わせる。やや乱暴に言ってしまえば、ちょうど8090年代のポスト・パンク/ネオ・アコースティックを境に逆の方向性に進化を遂げた2組だ。スプーンがキンクスを目指したとしたら、チャイルドフッドはディアハンターがお手本というか。経歴も好対照で、チャイルドフッドは時代の寵児として英米のメディアで既にもてはやされているが、スプーンが本格的にブレイクしたのは2007年の6作目『Ga Ga Ga Ga Ga』。活動開始から10年。解釈しだいでは、スプーンは時代の流行におもねることなく、ひたすら音楽性を研ぎ澄ましていった末にブレイクしたともいえる。どちらが良いというわけではない。


 前置きが長くなったが、岐阜出身で名古屋を中心に活動するツイン・ギターの4人組ロック・バンドHALF SPORTS(ハーフ・スポーツ)もまた、時代とは関係ない地点で自らを律し続けているバンドだ。ピクシーズやスーパーチャンクを思わせるパワー・ポップが彼らの音楽性の基本である。しかし、ジャケット・アートはワイアーのサード・アルバム『154』のオマージュであることにニヤリとさせられる。浮遊感あふれる歪なギター・エフェクトや、突然加速してはまた唐突に元のテンポに戻るといった捻くれた構成で、かつ難解な印象を与えない楽曲からも当然ワイアーの影響を感じさせる。明るさの中に空虚さを含んだような女性コーラスがハスキーな男性ヴォーカルに絡むさまや、随所で聴かれるザ・スミスやアズテック・カメラ等を思わせる繊細なタッチのギター・フレーズからも、ポスト・パンク/ネオ・アコースティックを起点にした音楽的背景が窺える。


 余計なお世話かもしれないが、筆者は一つ懸念を抱く。彼らの音は、ゴリゴリのハードコア・パンク勢からは遠く、より柔らかな音を奏でるネオ・アコースティック・リヴァイヴァルな若手バンドとも違う。マイナーなインディー・ロック村のなかでもさらにカテゴライズされにくい、受け入れられ難い位置にいるのではないかと。しかし自分の信念を貫くというのは得てしてそういうことだとも思う。周囲に流され本意ではない音楽を演奏してそこそこ成功するくらいなら、信じるスタイルに固執して注目されない方がなんぼかマシ。本当にしたいことをすれば例え失敗しても悔いはない。むしろ、演者も観客も一体になって楽しめるような音楽はその地点からこそ生まれてくるはず。



(森豊和)

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