ZAMILSKA『Untune』(Mik.Musik.!.)

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 ザミルスカのファースト・アルバム『Untune』だが、まずは本作に出逢うまでの話をさせてもらうとしよう。


 筆者は最近ポーランドのテクノにハマっている。キッカケは、チノのシングル「Early Days」。ちなみにこのシングルを手に取ったのは、《L.I.E.S.》などからリリースを重ねるヴェテラン・アーティスト、レゴウェルトによる表題曲のリミックスが目当てだったから。ハードウェアで作られた良質なテクノ/ハウスを量産する男の仕事ゆえに筆者も楽しみにしていたのだが、出来は "まあまあ" というのが正直なところで、強く惹かれるものではなかった。ところが、チノのオリジナル・トラックには興味をかきたてられてしまった。特に「Raw And Rugged」は、絶妙なタイミングで挟まれるヴォイス・サンプリング、ダンスフロアに集う人々のツボを確実に押すであろう巧みなトラック・メイキングといった具合に、ダンス・ミュージックの機能性を見事に備えていた。


 その後、ポーランドのテクノをディグる過程で遭遇したのが、RSSボーイズという2人組ユニット。アーティフィシャルかつエキゾチックな雰囲気を纏うヴィジュアルは高い匿名性に包まれ、作品のアートワークではペニスを用いるなど、一種のグロさも感じさせる。このセンスは、カニエ・ウェスト『Yeezus』に参加し、自身のサウンドクラウドにアップした『&&&&&』も話題を集めたアルカのヴィジュアル・イメージに通じるものだ。


 そんなRSSボーイズの作品をリリースしている《Mik.Musik.!.》から発表されたのが、ザミルスカの『Untune』というわけだ。ポーランド出身のザミルスカはシロンスク大学に通う現役の学生で、MVのほとんどを自ら制作するなど、DIY精神と創造性を持つ才女。


 彼女が鳴らすサウンドはズバリ、レジスが主宰する《Downwards》周辺に多い、ポスト・パンク色が濃い硬質なテクノ。インダストリアルでダークな雰囲気を強く打ち出しているが、そこにベース・ミュージックの要素を混ぜているのも面白い。こうした混合の類例を挙げるとすれば、ベース・ミュージックとインダストリアルを接続した音楽性で注目を集め、ハビッツ・オブ・ヘイトのメンバーとしても活躍するハッパになるだろうか。


 また、「Army」や「Duel 35」などはダンス・ミュージックの快楽性を秀逸なビート・メイキングで生みだしているものの、全体的にBPMはそれほど速くない。音の抜き差しも最低限に抑えられ、基本的には体よりも心を飛ばす音作りが目立つ。それゆえ、聴けば一発でハマるというような即効性は期待できないが、代わりにジワジワと魅了されていくスルメのような味わい深さをもたらしてくれる。このあたりは好き嫌いがハッキリ分かれるかもしれない。とはいえ、その味わい深さが聴き手の能動性を喚起するのも事実で、それが本作の魅力となっている。


 そして、ザミルスカの音楽を聴くうえで見逃せないのは、彼女がレベル・ミュージックとしてのテクノを鳴らしているということ。自身のフェイスブックにも書いているように、彼女は「ステレオタイプを破壊すること」に興味があるらしく、このことからも強い反骨精神を持つアーティストなのがわかる。だからこそ、先日もマレーシア航空機が領土内で撃墜されるなど、緊迫状態が続くウクライナを支援する目的で「Dissent [Support For Ukraine]」を発表したのだろう。このような精神は、アンダーグラウンド・レジスタンスの首謀者として知られるマッド・マイクに通じるもの。いわばザミルスカは、新たなライオット・ガールと言えるアーティストなのだ。



(近藤真弥)

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