white white sisters『SOMETHING WONDROUS』(micro kingdom)

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 激しい高揚感と、全てが過ぎ去ったあとの静けさが同居する。平沼喜多郎の叩くドラムに加えて、ギター/ヴォーカル/プログラミングの松村勇弥は今回ベースも自ら演奏している。よりヴォーカルを前面に出すプロダクションも施した。エレクトロ・ミュージックの様々な方法論を折衷しているが、もともと彼らの表現の芯にはギター・ロックのスピリットがある。それが生演奏の比重を増すことでさらに強調されている。


 かつてどこにもなかった国と名付けられた3曲目「Never Ever Land」やシングル・カットされた5曲目「Superneutral」ではその傾向が特に顕著だ。マッドチェスターからブリット・ポップの夢を2014年の日本で再現する。ストーン・ローゼスのようにポスト・パンク、サイケデリック・ロックをダンス・ミュージックに落とし込む手法に、オアシスが体現した単純で(だからこそ無敵な)カタルシスを注入する。かと思えば2曲目「I.D.」はLCDサウンドシステムが紐解いたニュー・ウェイヴ・ディスコの歴史をもう一度俯瞰する試みだ。4曲目「Experience Auras」はミニマルな冒頭から徐々に高まっていくダンス・ナンバー。ブリアルワンオートリックス・ポイント・ネヴァー等を愛聴する松村の嗜好が垣間見える。


 アルバムの構成は一本の映画のようだ。そのストーリーは歌詞やタイトルからも推測できる。例えばオープニング・ナンバー「Instant Dupe」は、すぐ騙される間抜け、カモの意味。6曲目の激しいダンス・ロック・ナンバー「Escape Line」は逃げ口上を意味する。続いて複雑な感情の揺れをイメージさせる「Counterfeit Rainbow」はまがいものの虹。DVD収録のVJ田嶋紘大が制作したMVではダイヤの指輪が粉々になるアニメーションが描かれ、《I'll make something wondrous(素晴らしい何かを成し遂げたい)》と歌われる。ジューク以降の流れを意識したかのような9曲目「Civilization」は文明化、ナイン・インチ・ネイルズのようなインダストリアル・ロックを彼らの感性で高速化させた10曲目「Manifold」は機械の枝分かれした排気管を意味するが、すると「Counterfeit Rainbow」のMVでは、工業化された物質文明をダイヤの指輪に例えたのかもしれない。それをまがいものの虹だとして粉々にする。アニメーションではその瞬間、真の美しい虹が現れるように見える。それこそが彼らの音楽なのかもしれない。


 ハムレットの悲劇のヒロインの名を冠した8曲目「Ophelia」は甘いシティー・ポップ・チューン。そして11曲目「Lust For Love」は彼らなりのインディーR&Bで最後にできた曲、今最もやりたいことの結晶だという。一方でラストの「Melt With You」ではアンダーワールドが体現した、しだいに加速度を増し、天上まで登りつめていくムードが2014年型にアップ・デートされている、9分近いこの曲は彼らの真骨頂。全体を通して伝わってくるのは揺るぎ無い信念。高機能なダンス・ミュージックとしてのテクノ、ハウス、アンビエントを越えて彼らが目指すのは、より多くの人に届くポップ・ミュージックだ。



森豊和

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