TRAXMAN『Da Mind Of Traxman Vol.2』(Planet Mu / melting bot)

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 2年前、トラックスマン 『Da Mind Of Traxman』がリリースされたときのジュークは、"広がりつつある" という段階だった。もちろんクラブで流れることはあったし、注目も集めてはいたが、"一般的" と言えるほどではなかった。


 しかし今では、ジュークの影響を感じさせるトラックが本当に多くなった。レコード・ショップ、バンドキャンプ、サウンドクラウドなどを散策し、"Bass" とタグ付けされた曲を聴いてみる。すると、不意に鳴らされる乾いたスネア、規則的に刻む人間の鼓動からどんどん離れていく忙しないリズム、そして強烈なベース。こういったジュークの特徴を匂わせる曲に遭遇することが増えたように思う。一方では、サグ・エントランサー『Death After Life』やスラヴァ『Raw Solutions』のように、ベッドルームを根城にするインディー・ファンも巻き込めるジューク・アルバムが生まれたり。そんな現況を見ていると、ジュークは文字通り "定着した" と言えるのではないか。


 それは日本も例外ではない。代官山ユニットでおこなわれたトラックスマンの来日公演、新宿LOFTで定期的に開催されているイベントSHIN-JUKE(シンジューク)、それから日本のジューク界を語るうえで欠かせないレーベル《Booty Tune》。これらのパーティーやレーベルの多大な努力によって、日本はジューク生誕の地シカゴにも負けないジューク大国となった。音楽メディアFACTに取りあげられた食品まつりのように、国外から注目を浴びるトラックメイカーも現れている。


 トラックスマンの最新作『Da Mind Of Traxman Vol.2』を聴くと、そうした状況においても揺るがない自らのスタイルに対する自信を感じる。DJラシャド『Double Cup』のようにジュークとジャングルを混ぜるわけでもなければ、アイタル・テックなどに通じる初期IDMの要素が強いジュークでもない。ソウル、ヒップホップ、ハウス、ジャズといった要素が散りばめられた上品な色気をまとう心地よいジュークであり、言ってみればこれまでトラックスマンが生み出してきた曲群との大きな違いはない。


 とは言っても、それで本作の魅力が削がれるかといえば、決してそうではない。むしろ、深化をしながらも変わらず残っている部分にこそ、本作の素晴らしさを見いだせるからだ。その「部分」とはズバリ、ジュークという音楽がさまざまなブラック・ミュージックの因子を内包し、作り手の解釈次第でその姿をいかようにも変える音楽であるということ。そんなジュークの真髄を本作は教えてくれる。


 こうした作風は、冒頭で述べたジュークの「定着」をふまえると非常に興味深いものだ。ダブステップがいくら商業化したところで、そういった潮流とは別のところでディープなトラックがアンダーグラウンドから次々と生まれ、商業化する以前のダブステップにあった精神やスタイルが脈々と受け継がれてるように、もしやジュークもそういう段階にきたのかもしれない。だからこそ本作でトラックスマンは、そのような残していくべき精神やスタイルを提示したのではないか?


 テクノを掘りさげれば必ずデリック・メイに遭遇し、ハウスに傾倒すればフランキー・ナックルズを避けて通れないように、トラックスマンもまた、ジュークという音楽の原点を教授してくれる伝道師なのだ。



(近藤真弥)

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