ジョセフ・アルフ・ポルカ「天声人語」(Self Released)

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 シーンの主流からはみ出しているからこそ生まれるトリックやミラクルがある。名古屋のインディー・シーンでも《THISIS(NOT)MAGAZINE》の周辺に、そういった異端かつ奇異なミュージシャンが集まっている。6eyes(シックスアイズ)やMILK(ミルク)のようなポスト・パンク/ハード・コア系のバンドから、ジョンのサンやYOK.(ヨック)のような叙情的アーティストまで様々だが、最近注目されているtigerMos(タイガーモス)は特に変わったユニットだ。アメリカ帰りのSSWイケダユウスケが、レミ街のキーボード/トラック・メイカーの荒木正比呂を誘って結成し、幻想的なフォーク、サイケデリア、エレクトロニカを折衷したサウンドをバックに、優しく滋味深いファルセットで歌い上げる。


 本稿の主役ジョセフ・アルフ・ポルカも変わった音楽性という点では負けていない。ヴォーカル/キーボードのてんしんくんとギター、ベース、ドラムの4人組である彼らが奏でるのは10年代の和製アシッド・フォーク。のどかな自然の風景がびろーんと拡張したり、だらしなく垂れ下がったり、目眩のようにふわふわ、ぐるぐる回ったり、時にすごい速さで迫ってきたりする。6曲入りの本EPは、前作に比べて良い具合に力が抜けたへろへろな疾走感、サイケ具合がより極まっている。長久手の大自然の中にある彼らの母校、愛知県立芸術大学が育んだ異形サウンド。USインディー直系のきらびやかに爪弾かれるギターは平原に昇る朝日のように我々を照らし、リズム隊がしっかりとしているからこそ、ヴォーカルやキーボードが思う存分暴れることができる。まるで野原を転げ回る小動物のように。


 長久手はかつて愛知万博が行われた土地。リニア・モーター・カーによる路線が新設され現在も運行されている。国道以外ほとんど何も無い風景に、突然、万博跡地である国営公園が現れたときの気分といったら、まるでSFの世界だ。静かな車内ではるか上空から眺めるその景色は古代文明の遺跡のよう。本作収録のカヴァー曲、沢田研二「TOKIO」はこの風景を歌ったのかもしれない。そして万博の各国ブースを引き継いだかのように彼らの音楽からはどこか異国情緒も漂う。


 前述のtigerMosにしても、このジョセフ・アルフ・ポルカにせよ、奏でる音は違うが、今の感覚で70年代のサイケデリック・ロックが持っていた色気を再現しようとしている。かつて繁栄した文明が滅んだ後の、無人の廃墟が点在する世界を歩むイメージ。万博の繁栄が断ち切られた愛知の郊外で、大阪や東京、そして海外からの影響を断片的に取り入れながら、彼らなりのいびつで、しかし筋の通ったポップスを編み出している。



(森豊和)



【筆者注】「天声人語」はライヴ会場、FILE-UNDER大須の服屋『麻芽』、itunesで購入できます。

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