The キャンプ『キャンボリズム』(ONE BY ONE RECORDS)

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 こだわりとかプライドとか、誰にだって捨てられない、曲げられないことはある。しかし妥協するのではなく、良い意味で開き直ることだって必要じゃないか。名古屋在住のロック・バンドTheキャンプの初流通盤を聴いてそんなことを思った。


 味のあるいなたいヴォーカルに、ハード・ロック・テイストのギター、ソウルのグルーヴ感溢れるリズム隊が粋な組み合わせだ。1曲目、大地を揺らすファンク・チューン「ピカデリー」でアガり、次曲「アルフレッド」冒頭のギター・フレーズで思わずニヤリとする。B'z「Pleasure'91 人生の快楽~」からの引用だろう。この曲は、バンド仲間のその後の人生について歌っている。愛する街、日々の生活のなかで流れる音楽や、価値観と共にあること。大切なつながりを保って生きていくこと。


 まだインターネットも十分普及していない2000年代初頭、既に名古屋でもアンダーグラウンドなクラブ、ライヴハウスを中心に、海外志向のパンクやオルタナティヴを鳴らすインディー・バンドが活動していた。しかし、その認知度は東京とは比べるべくもなく、地理的に近い大阪や京都のようにDIYの強固な土壌があるわけでもなかった。名古屋はハード・ロック、ヒップホップぐらいしか流行らない街。それが一般的なイメージだった。


 しかしmixiを始めとしたSNSの普及が音楽ファンとミュージシャンをつなげ、名古屋のような地方都市においても音楽コミュニティーが発展する。2007年頃から、OGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)が全国区で人気を博し、竹内電気、mudy on the 昨晩やcinema staff(シネマスタッフ)等が後に続く。新進のインディー・バンドを観るために必ずしも東京へ行く必要はない。そういった空気が生まれた。Theキャンプをリリースするレーベル《ONE BY ONE》もその流れのなかで重要な役割を担い続けている。同月リリースの新鋭sukida dramasにせよ、レーベルの顔であるiGOにせよ、このレーベルのウリは良い意味でのごちゃまぜ感だ。産業ロック? 90年代J-ROCKのフレーヴァー? みんなで踊れるならいいじゃないか! 尖った音楽だけをやっていても地元の友達は喜んでくれない。家族を持ち子どもの生まれた奴だっている。老若男女に届く音楽がいい。その上で自分達にしかできない表現を。


 各地のフェス出演を経て叩き上げられたバンド・アンサンブルを武器に、Theキャンプは雑多な要素を含んだファンク・ロックを鳴らす。大阪や京都のインディー・シーンのように独自の色があるわけではない。しかしポップスとインディー・ロックの不思議な融合が個性である名古屋シーンにおいて、彼らは新しい台風の目となっている。



(森豊和)

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