THE ‎HORRORS『Luminous』(XL / Hostess)

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 ザ・ホラーズの『Luminous』は文字通りの良作だが、デビュー当初の彼らを知る者からすると、感慨と驚きが入り混じった気持ちに襲われ、同時にいろいろ考えさせられてしまう内容かもしれない。


 ファースト・アルバム『Strange House』の頃、彼らはキワモノとして扱われていた。ゴシックなヴィジュアルもそうだが、『Strange House』のリリース前におこなわれたUSツアーで、ヴォーカルのファリスが客と乱闘騒ぎを起こしたりと、音楽以外の面でニュースになることも多かった。それはそれでリスナーにショッキングな存在として認知され、強い印象を残したのは間違いない。とはいえ、注意深く『Strange House』に耳を傾けてみると、ガレージ・ロックやサイコビリーといった要素がちらつく通好みのサウンドだから、そういう彼らの高い音楽的素養が見過ごされがちなのは残念だと思っていたのも事実。


 しかし、セカンド・アルバムの『Primary Colours』、そして続くサードの『Skying』と、彼らは作品を重ねるごとにその音楽オタクぶりを発露していく。デビュー当初のセンセーショナリズムな側面は影を潜める一方、着実にスキルアップする姿はとても真摯に映るものだった。この2枚を聴いて、なぜ彼らがアンドリュー・ウェザオールやポーティスヘッドのジェフ・バーロウといった玄人から寵愛を受けたのか理解した人もいただろう。


 さて、そんなザ・ホラーズが4枚目となるアルバム『Luminous』を完成させた。前作で描かれたサイケデリアはよりスケールのデカイものとなり、全体的にエレクトロニックなサウンドが際立っている。ゆえにダンス・ミュージックのようなグルーヴもあるんだけど、それがテクノやハウスというよりも、マッドチェスターに通じるロック色の強いものなのが、イギリスのバンドらしいというかなんというか。たとえば、プライマル・スクリーム『Exterminator(XTRMNTR)』のように、キックやスネアの質感、それからビートの組み立て方にまで明確なテクノ色が出ているわけではない。どちらかといえば、グルーヴといった感覚的な部分でダンス・ミュージックの影響が表れている。だからこそオープニングの「Chasing Shadows」は、『Honey's Dead』期のジーザス・アンド・メリーチェインを彷彿させる曲調になったのかもしれない。『Exterminator(XTRMNTR)』と比べて『Luminous』は、"ロック側から解釈したダンス・ミュージック" という側面が強い。これまたマッドチェスターを引き合いに出すと、808ステイトよりもストーン・ローゼズやハッピー・マンデイズ的。さらに、スタジアムが似合う壮大なサウンドスケープはザ・ヴァーヴを連想させる。


 こういった具合に『Luminous』は、80年代末~90年代の要素があまりにも濃すぎる。しかも、セカンド・サマー・オブ・ラヴ期の享楽的なサウンドを衒いなく鳴らし、時代錯誤すれすれの内容となった『Free Your Mind』を発表したカット・コピーほどの潔さも見られない。さらに言うと、『Primary Colours』で見られた新しい音を鳴らそうとする探求心も薄い。要はどっちつかずで中途半端なのだ。この点に関しては、少し物足りなさを抱いてしまう。彼らが多くの引き出しを持つバンドであることを証明するという意味では、一定の評価をできるものであってもだ。彼らのポテンシャルはこんなものではない。良作なのは間違いないが、傑作と言うのはさすがに憚られる。



(近藤真弥)

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