JOEY ANDERSON『After Forever』(Dekmantel)

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 ジョーイ・アンダーソンは、DJジャスエドやDJキューといった、いわゆる《Underground Quality》周辺のアーティストと共に、USハウス・シーンにおける新たな中心人物として注目を集めてきた。《Strength Music》より2008年にリリースされたコンピレーション・シングルに曲を提供して以降、彼は印象的なトラックを量産。しかし面白いことに、USハウスと括られがちなジョーイのサウンドは、ハウスと言うには少し違和感を抱いてしまうものだ。もちろんハウスが基調にあるのは間違いない。だが、DJジャスエドにDJキュー、さらに『Naturally』という良盤を発表したのも記憶に新しいダナ・ルーといった人たちに共通する、ロマンティックで開放的なサウンドスケープとは一線を画する。ジョーイのそれは意識の深層世界に潜り込むようなものであり、内観的な抑制美すら感じさせる。ミラーボールきらめくダンスフロアのさらに下、それこそアンダーグラウンドという言葉が相応しい音。これは《Underground Quality》周辺において異端的なサウンドだと言える。


 そうした姿勢は、待望のファースト・アルバム『After Forever』でも変わらない。まず一聴して驚くのは、ハウスというよりは初期のデトロイト・テクノを引き合いに出したほうがしっくりくるそのプロダクション。正直、"USハウス" と聴いて思い浮かぶであろうアーティスト、例えばフランソワ・ケヴォーキアンなどの顔が浮かんでくることはない。むしろデリック・メイやカール・クレイグの姿が脳裏をかすめる。基本的に4つ打ちとはいえリズム・パターンも多彩で、ジャズの要素をちらつかせる「Sorcery」、ファンキンイーヴンなどのアシッド・ハウスから影響を受けたベース・ミュージックとも共振する「Amp Me Up」など、ジョーイの豊穣な音楽的背景をうかがわせる曲群も聴いていて飽きがこない。先に「初期のデトロイト・テクノを引き合いに出したほうがしっくりくる」と書いたが、もうひとつ付けくわえるなら、ジャズやソウルの香り漂うダブステップをリリースしてきたレーベル《Eglo》と接続可能な音楽性が本作にはある。まあ、それを言ってしまえば、「Keep The Design」は『Frequencies』期のLFOを想起させるプリープ・テクノなサウンドが飛び出してくるし、「It's A Choice」はシカゴ・ハウスそのもの・・・といった具合に連想が止まらなくなってしまうのだが。


 いずれにしても本作は、USハウスに愛を捧げてきた往年のダンス・ミュージック・ファンだけでなく、ダブステップ以降のベース・ミュージックに感化された若い層にも訴えかける多様な作品だということだ。




(近藤真弥)

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