CRZKNY『DIRTYING』(Dubliminal Bounce)

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 ヴィンテージ・ナイキ『Dubna』やアディソン・グルーヴ『Presents James Grieve』などなど、今年もシカゴのジュークを取り入れたアルバムは数多く生まれている。


 もちろんジュークの本場シカゴ勢も黙ってはいない。トラックスマンは『Da Mind Of Traxman Vol.2』という最新アルバムをリリース予定だし、そして先日惜しくも亡くなってしまったDJラシャドは、ニューEP「We On 1」を遺している(これが遺作になってしまったのは、本当に残念としか言えない・・・)。


 こうした状況のなか、日本のトラックメイカーCRZKNY(クレイジーケニー)がアルバム『DIRTYING』をドロップした。前作『ABSOLUTE SHITLIFE』もかなりやりたい放題の内容だったが、本作は前作以上に幅広い音楽性を獲得し、彩度ある内容となっている。ジュークを基調にしながらも、強烈なキックから始まる「Dirtying」はハード・ミニマルとの親和性を見せ、さらに「New Z Land」はドレクシアといったデトロイト産のオールド・スクール・エレクトロ、そして「Facebook Off」では、それこそDJラシャドが『Double Cup』で披露したジュークとジャングルの結合を見事に果たしている。この折衷性は世界中を見渡しても稀有なものであるのは言うまでもなく、文字通りCRZKNYのオンリー・ワンな才能だと言える。


 イギリスではジュークがポスト・ダブステップの文脈で解釈される一方、ニューヨーク在住のスラヴァなどがベッドルームでも機能する "聴かせるジューク" を鳴らしたことからもわかるように、ジュークは高い順応性を孕む音楽だ。このポテンシャルに気づいたトラックメイカーたちは、それぞれの解釈のもと良質なトラックを生み出し、それが現在も続くジュークの盛り上がりに繋がっているわけだが、そのなかでも本作は飛び抜けた存在感とクオリティーを持っている。「Steam Massacre」といった、前作の「3minute 2K13」に相当するお茶目なトラックもあり、持ち前のユーモアも健在。とはいえ、もっとも特筆すべきは、ジュークの流れや歴史云々についての知識を事前に知らなくても、強烈なベースと暴力的なビートによって "カッコいい" と直感的に想わせるトラックが満載、という点かもしれないが。そういった意味では、ジュークをあまり知らない人に向けた入門編的な1枚としてもオススメしたい。




(近藤真弥)

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