ASHLEE「Ashes 2 Ash」(Other People)

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 ファースト・アルバム『Space Is Only Noise』で話題を集めたニコラス・ジャーという男は、デイヴ・ハリントンと結成したダークサイドとしても『Psychic』を発表するなど、デビュー当初からほぼ休まず活動を続けてきた。さらに彼はこうした音楽活動に加えて、《Other People》の主宰としても興味深い作品をいくつもリリースしている。ジャングルとジュークを混ぜ合わせたヴィンテージナイキ『Dubna』、幽玄なアンビエントにロマンティックなディープ・ハウスのサウンドが溶け込んだドリュー・グラッグ「Over-Under」といった具合に、特定のレーベル・カラーを打ち出すというよりは、ヴァラエティ豊かなカタログが《Other People》の特徴だ。


 そんな《Other People》が新たにフックアップしたのが、アシュリーと名乗る女性アーティスト。彼女のサウンドを端的に表すと、極端に音数が少ないミニマルなエレクトロニック・ミュージック。それでいて、反復するビートによって高い中毒性も得ている。実験音楽に没頭するシリアスな雰囲気を窺わせるが、何度か聴いているうちにリラックスとした抜けの良さがあることに気づく。こうした肩肘張っていない遊び心はインガ・コープランドのサウンドを想起させる。


 とはいえ、そのコープランドと比べれば、アシュリーにはヒップホップやR&Bからの影響を感じさせる歌心がある。同時に、自らの歌声を曲全体の一部として扱う鳥瞰的視点と冷徹さもアシュリーの音楽には存在する。この点は18+とも共振する側面だと言えるだろう。


 だが、こういった近年のアンダーグラウンド・ミュージックと接続できる彩度を備えた「Ashes 2 Ash」は、面白いことに先述の『Space Is Only Noise』に近い作風だ。このアルバムもまた、過剰に音を盛ることはせず、ニコラスの渋く味わい深い歌声をひとつのパーツとして機能させた作品。それこそ、18+やインガ・コープランドのソロ作品との類似性を見いだせるほどの。言ってしまえば「Ashes 2 Ash」は、ニコラス・ジャーの感性が未来を的確に捉える鋭いものであることもわかる作品なのだ。


 そう考えると《Other People》は、あまり知られていないアーティストを紹介すると同時に、ニコラスの感性を素直に反映させたレーベルなのかもしれない。もしかすると、ニコラスがピンときた音をそのままリリースしているのでは? そう思わせるほど、《Other People》の作品群は見事にバラバラな音楽性である。だとすれば、どうしてもニコラスの次、つまり『Space Is Only Noise』に続くセカンド・アルバムのほうにも期待を抱いてしまう。レーベル主宰者としての活動をいかに取り入れ、表現するのか・・・。だからニコラス、そろそろセカンド・アルバムを出してくれないだろうか?




(近藤真弥)

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