MO KOLOURS『Mo Kolours』(One Handed Music) 

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 カーティス・メイフィールドを連想させる官能的な歌声と、パーカッション主体の音作り。ファンク、ダブ、レゲエ、雑多なようで統一された最小限のビート。モー・カラーズの音楽を聴いていると、陽光の下、昼間からビールが飲みたくなる。庭でイスにもたれかかる。春の日差しの中で浮かれた友人が踊りだす。しばらくして彼は言う。「なんだかつんのめるんだ、足が引っ張られるみたいに」。どういうことか問うと彼は続ける。「これはヒップホップかもしれない。でも同時にレゲエっぽくなったり、サンバかと思う瞬間もある、まるで『海流の中の島々』を旅したかのように、様々な音楽が混じり合っている。けれど同時にどこにも属していない。それは僕をとても不安で奇妙な気分にさせる」。それでも、いや、だからこそ彼は踊らずには居られない。


 モー・カラーズとは、アフリカはモーリシャス共和国人と英国人のハーフであるジョセフ・ディーマモードのソロ・プロジェクトであり、ヴォーカル、パーカッション、サウンド・プロデュースの全てを彼が手がける。アフロ・ビートをアンビエント風に仕上げて、自然音、機械音問わず様々なサンプリングでコラージュしている。手法自体はさほど珍しいものではない。実験精神を持った音楽家であれば試みるかもしれない。しかし彼の作品を個性的にしている雰囲気、陽性のヴァイブと共に感じられる不安感 ― なぜだか人を浮き足立たせる― はいったい何に由来するのだろう。


 レッドブル・ミュージック・アカデミーのインタヴューによれば、7才の時、ロンドンに住むジョセフは父に連れられモーリシャス共和国へ行き、その地の伝統音楽である「セガ」の踊りを観たという。夜の浜辺で踊る男たちを見てジョセフは不思議に思い父に尋ねた。「彼らはなぜ足をあんなにくっつけて踊っているの? 」「かつてこの国の人々は足枷を付けさせられ、自由に足を動かせなかった。それを表しているんだよ」。


 アフリカ人奴隷が過酷な労働の憂さ晴らしに始めたというセガは8分の6拍子系のダンス・ミュージック、パーカッションによる即興であり、抑圧からの解放を表現する。セガの踊りは性行為の暗喩でもあり、揺れてクルクル回るようにソレを突き刺していく。そのフィーリングはモー・カラーズの音楽にも受け継がれている。


 18世紀はフランス、次いで19世紀にはイギリスの支配を受けたモーリシャス共和国では、支配者の言語であるフランス語や英語ではなく、被支配者の言語であるアフリカの言語でもない、両者の特徴を持ちつつも全く独立した言語体系であるクレオール語が生まれた。そして突然変異的なクレオール文化が形成され、セガもその一つだという。支配者と被支配者の間に生まれたモー・カラーズことジョセフは、セガの精神性を受け継ぎ、彼独自の音楽を生み出した。



(森豊和)

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